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【松本浩彦医師】分子標的治療薬に厳重な規制…オプジーボに見る安全と効果の葛藤

 以前オプジーボについてお話ししましたが、今回はがん治療の尖兵としていま最も期待が寄せられている分子標的治療薬についてお話しします。

 肺がんに対する分子標的治療薬「イレッサ」は2002年、世界に先駆けて日本で認可されました。夢の薬ともてはやされますが、発売直後から間質性肺炎の副作用で多くの患者さんが亡くなり、薬害裁判に見舞われ、夢の薬は一夜にして毒薬の汚名を着せられて社会から葬り去られる寸前まで追い込まれます。

 ところがその数年後の研究で、患者さんの人種や性別、遺伝子変異によって、効く人と効かない人がいることが判り、さらに標的分子そのものまで間違っていたことが判明します。今ではイレッサを使う際は事前に精密な遺伝子検査を行うようになり、非常に良好な治療成績を示していますが、ちゃんとした研究を後回しにして患者さんに使ったことは大きな過ちで、同じ轍を踏まないように、分子標的治療薬の使用には行き過ぎとも思えるほど厳重な規制があります。

 先月オプジーボの有効性が2割程度と書きましたが、これもその弊害と言えます。オプジーボの使用は、放射線治療や化学療法を行なって無効な場合、と限定されています。オプジーボは免疫T細胞のブレーキを外す薬ですが、すでに他の抗がん剤治療でT細胞がヘロヘロに弱った状態では、その効果も激減してしまいます。

 がんが見つかってすぐに使えばもっと有効性は高まるはずですが、イレッサの教訓があって、なかなか制限を緩和できないのです。私はこれを「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」状態だと考えています。えっ、例えの意味がわからない?今やネット社会です。調べてみてくださいな。

 ◆筆者プロフィール 松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。

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