【窪谷日奈子医師】目薬をしてもドライアイが治らない…それって違う病気かも
「まぶしい!」
「目が勝手に閉じてしまう!」
「目が乾く!」
症状だけ聞くとドライアイのようですが、「ドライアイの目薬をしているのにちっとも良くならない!」というあなた。それはもしかするとドライアイと間違われやすい目の病気「眼瞼けいれん」かもしれません。
「けいれん」というとピクピクする病気と思われそうですが、眼瞼けいれんはまぶたがピクピクするわけではありません。まぶたの開閉を行っている神経の制御ができなくなるせいで、さまざまな症状が起こってくる病気です。
代表的な症状は冒頭にあったような…「まぶしい」「目を閉じていたくなる」「目が乾く」「勝手に目が閉じてしまう」「目がごろごろする」…といったもの。一見するとドライアイのようですが、乾燥が原因ではありませんので、いくら目薬をしても症状は治らないのです。しかし症状はドライアイとよく似ているので、ある統計では「眼瞼けいれんの患者さんの約半数がドライアイと誤診されている」とされているほどです。
患者さんの半数にうつっぽさや不安、不眠などが見られるため、原因がわからないまま「うつ」「自律神経失調症」と診断されて心療内科にかかっている方もいます。ひどくなると目を開くことがまったくできなくなるため、車の運転が危険になり日常生活もままらなくなってしまうことも…。
この病気の特徴は、まぶたの動きの不自然さ。素早くまばたきを繰り返すと、力が入って動きが不自然になってきたり、1度強く閉じるとぱっと開けられないという症状があります。また普段からまぶたの周囲の皮膚や眉間に力が入っているので、こわばったような表情になっていたり、険しくしわを寄せている方が多いです。
抗精神病薬や睡眠薬が原因で起こることもあるので、原因になりそうなお薬があればできるだけ減らしていく必要も出てきます。
根本的な治療にはなりませんが、症状をよくするためにボツリヌス菌の毒素(ボトックス)を注射してあげる方法もあります。ボトックスをまぶたの周りに注射すると、目の周辺がリラックスして症状が改善することがあります。
眼瞼けいれんは診断がつかないまま、精神的に疲弊している方が多い病気です。ドライアイのような症状があるのに、目薬をしても改善しない場合は、ぜひ1度眼科を受診してみてくださいね!
◆筆者プロフィール 窪谷日奈子(くぼたに・ひなこ)医療法人社団吉徳会・あさぎり病院・眼科医長。眼科専門医。