【松本浩彦医師】世界に冠たる国民皆保険制度…守るために考えなければ

 海外旅行中に病気や怪我(けが)をされた方、ご苦労をされたのではないですか?最近では、そこまでひどくなくなってきたようですが、アメリカで、例えば救急車で病院に運ばれた時、運び込まれて来たまさに死にかけの患者さんに、救命救急医は最初に「金は払えるのか?」と尋ねます。

 日本では、健康保険証さえ持っていれば、どんな人でも、最高で最新の医療を受けることができます。これはまさに世界に冠たる日本の国民皆保険制度の賜物です。誰もが、必要なときに必要な医療を受けられる、そんな国は世界中どこを探しても日本だけです。

 福祉大国と言われる北欧では、確かに医療費はタダですが、例えばインフルエンザにかかったとして、医療機関に電話しますと「では3日後のお昼過ぎに来てください」と言われます。そんなことしてたら手遅れですよね。医療機関が圧倒的に少ないから、そういうことになるのです。

 医療機関を自由に選べるフリーアクセス、その人の収入に応じて負担率に違いはあっても、他の国に比べてはるかに安い料金で高度な最新医療が受けられる。この世界に誇る保険制度のおかげで、日本の医療は世界一といわれているのです。平均寿命、健康寿命、乳児死亡率など、世界で最も優秀な数字を誇る、この日本の医療を支える象徴的な仕組み。その有り難さに気づいていない人が、意外に多いのではないでしょうか?

 しかし、日本の国民医療費の総額は、毎年1兆円を超えるペースで増え続けており、現在の仕組みのままでは、国民皆保険制度を支えることが難しくなってきているのが現状です。この優れた制度を堅持するために、いまこそ我々一人一人が考えねばならない時に差し掛かっているのです。

 ◆筆者プロフィール 松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。

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