横浜・平田監督が伝統校に吹かせた新たな風

5回、2ランを放った増田を抱き締める横浜・平田監督(左)
試合後、号泣しながらナインを抱き締める横浜・平田監督
3年ぶりに甲子園への切符を手にした横浜高校
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 高校野球ではあまり見かけない光景だった。7月31日、夏の全国高校選手権神奈川大会の決勝。初回に横浜の3番・増田珠外野手(2年)が先制2ランを放つと、ベンチで平田監督が抱き締めて迎えた。五回に再び2ランを放つと、同じ光景を繰り返した。

 レンズ越しにその様子をずっと見ていた。周りのナインがその姿を見つめ、一様に笑みを浮かべる。撮っていて楽しい光景だった。

 主将の公家響内野手(3年)も「選手を抱き締めたのは初めて見ました。思わず気持ちが出てしまったのかも。でも、あれで一気にベンチが明るくなりました」と試合後に振り返り、頬を緩ませた。

 高校野球の監督と言えば「厳しい」「怖い」というイメージが一般的だ。高校球界を代表する伝統校・横浜でもそこは同じ。名将で知られた渡辺前監督の言葉にナインは直立不動で耳を傾けていた。

 その伝統校を昨夏から率いるのが平田徹監督(33)だ。高校時代は控えながら主将を務め夏4強入り。保健体育教師として母校に戻るとコーチ、部長と経験し、32歳の若さで監督に就任した。

 「常に(選手を)萎縮させないこと」を心掛ける。春に練習の取材をした時も選手に笑顔で声を掛けながら延々と打撃投手を務める姿を目にした。「勝ち負けは自分が背負う。選手には力を出すことだけに集中させたい」。伝統校に新しい風が吹くのを感じた。

 その思いが神奈川大会で実を結ぶ。伸び伸びとプレーした選手たちは大会新記録の14本塁打で頂点へ。就任1年目で見事に甲子園への切符を手にした。渡辺前監督も「選手の力を引き出した。あれだけのチームを作ったのは平田の手腕だ」とその力を認める。

 試合後、ナイン一人一人を号泣しながら抱き締める青年監督の姿があった。その様子を周りのナインが笑顔で見守る。まるで師弟が入れ替わったようだ。そして最後に仁王立ちしながら「よし、上げろ」と胴上げを催促。「監督」というより、まるで「兄貴」だ。頼れる兄貴は弟たちの手で高々と宙を舞った。

 生まれ変わった伝統校がこの夏、大舞台でどんな姿を見せるのか。今から楽しみだ。

(写真と文=デイリースポーツ・出月俊成)

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