【野球】「宇和島東で野球をやるつもりはなかった」ヤクルト、楽天で17年の宮出隆自さん 同高からは4年連続でドラフト上位指名
ヤクルト、楽天で投手、外野手として17年の現役生活を送り、引退後は13年間ヤクルトのコーチを務めた宮出隆自氏(48)。30年というプロ野球人生の原点は、愛媛・宇和島東高時代にあるが、本人は高校で「野球をやるつもりはなかった」と振り返る。ひょんなことから名将・上甲正典監督のもとで野球をやることになった宮出さん。当時同高からは宮出さんを含め4年連続してドラフト上位でプロ野球選手が生まれている。
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四国、愛媛の南西部に位置する海と山に囲まれた港町に宇和島東高はある。1988年に同校をセンバツ大会で初出場初優勝に導いたのが上甲監督だった。
宮出さんも上甲監督のもとで鍛えあげられ94年には2年生ながら甲子園に春夏連続出場。3番打者として“牛鬼打線”の中軸を担い、2回戦の広島商戦では延長13回にチームをベスト8に導く2点二塁打を放った。
投手になったのは3年から。1年未満のキャリアながら剛腕ぶりを発揮したことが95年のドラフト指名につながっている。ただ、それは偶然の産物でもあった。
「僕は、宇和島東で野球をやるつもりはなかったんです。中学1年の途中で野球をやめて、中2、中3は野球をやらずに、スケボーとかをやってたんです。そしたら中3の終わりごろに、橋本さんが部活の帰りに家に来たんです」
高校の1学年先輩で、ロッテにドラフト3位で入団し捕手として活躍した橋本将氏とのやりとりを振り返った。
2人は宇和島市の和霊小時代からの先輩、後輩の間柄で、宮出さんが低学年でソフトボールをやっていたときの監督は橋本氏の父親でもあった。
「橋本さんから『上甲監督が野球部に入ってくれと言ってる』と伝えられたんですけど、断ったんです。でも、僕の父親がたまたま、そのやりとりを見てたんです」
野球をやめていたが、4番でエースとして地元では知られた存在だった宮出さんへの上甲監督からのスカウトだった。その夜、宮出さんは父に呼ばれ「お父さんは、もう一回野球をやってほしいと思ってる」と告げられたという。
「野球もやらずにぷらぷらしてたから心配してたんでしょうね。おやじに頼まれごとをされるなんてなかったので、それだったらやるかと思って始めたんです。人生って面白いですよね。おやじが橋本さんとのやりとりを見てなければ、僕の人生は変わってたんです」
野球部は猛者ぞろいだった。橋本捕手以外にも、2学年上にはドラフト1位でオリックス入りした平井正史投手、日体大を中退後、近鉄入りした岩村敬士外野手。1つ下には、宮出さんと同じヤクルトにドラ2で指名される敬士さんの弟、岩村明憲捕手も入部し、バッテリーを組んだ。
地方の公立高から4年連続してドラフト上位でプロを輩出したのは類を見ない。「すごいですよね。田舎で、みんな家を知ってるような間柄で」。全員が地元出身者というのも興味深い。
上甲監督は甲子園で話題になった「上甲スマイル」とは別に、厳しい監督だったが「僕には甘かったんです」と笑う。「僕は野球部に入らないってところから始まってるから、たぶん監督は、怒ったら僕が辞めると思ってたんでしょう。上級生は、何かあったら“宮出のせいにしろ”って言ってましたね。それだったら怒られないから」
上甲監督の盟友でもあった馬淵史郎監督率いる高知・明徳義塾高校と行われていた練習試合は忘れがたいという。「監督同士が刺激を受け合って激しかったんです。お互いが気合を入れ合ってましたね」。火花を散らしながらの対戦だった。
上甲監督は宇和島東の監督を退任後、同じ愛媛の私学・済美高に着任し、創部3年目の2004年に福井優也投手(早大から広島、楽天)を擁してセンバツ初出場初優勝を果たすなど監督として通算17度甲子園に出場、25勝を挙げた。
その後、体調を崩して闘病していた上甲監督は14年9月2日に67歳で死去した。当時ヤクルトの2軍コーチを務めていた宮出さんは、その前日に東京から日帰りで愛媛の病院に恩師を見舞っている。
「あまり状態が良くないと聞いてお見舞いに行ったんです。監督の顔を最後に見られてよかったです」。しみじみと恩師と過ごした時間を振り返った。
(デイリースポーツ・若林みどり)
宮出隆自(みやで・りゅうじ)1977年8月18日生まれ。愛媛県出身。宇和島東高から95年度のドラフト2位で投手としてヤクルトに入団。2002年から野手に転向。06年に規定打席に到達し、打率・275、9本塁打、59打点をマーク。09年から楽天で2年間プレーしてヤクルトに復帰。投手では49試合で6勝5敗、防御率4・73。通算701試合出場で458安打、216打点、39本塁打、打率・277。引退後はヤクルトの1、2軍の打撃コーチなどを務め、21年は1軍ヘッドコーチとしてリーグ優勝、日本一に貢献。身長192センチ、99キロ。
