【ファイト】「平成のテロリスト」村上和成が初タイトル防衛戦に秘める思いとは 影響受けた恩人たちの存在

 「平成のテロリスト」という物騒なニックネームで知られるプロレスラーの村上和成(50)が、26日のストロングスタイルプロレス(SSW)の後楽園ホール大会で、船木誠勝(55)を挑戦者に迎えて初タイトルであるレジェンド王座の初防衛戦を行う。30年のプロキャリアの背後には、プロレス人生で薫陶を受けたアントニオ猪木さん、星野勘太郎さん、初代タイガーマスク(佐山聡)らの存在がある。

 タイトルには価値を見いだしてこなかった村上だが、レジェンド王座がSSWのベルトである意味は大きかった。団体の名誉顧問である佐山は、村上がプロレス入りする道を開き、多大な影響を受けた恩人だからだ。

 村上は1995年に総合格闘家としてプロデビューし、98年に猪木さん主宰のUFOでプロレス入り。総合格闘技で佐山に稽古をつけてもらい、UFO入りも佐山から猪木さんに紹介された。「導きというか、分岐分岐には佐山さんがいて縁が深い」と説明する。佐山からは「なにクソこの野郎根性が必要」といった精神面での教えも受けてきた。

 佐山は「まんまでいいよ。思った通り動きなさい」「プロレスは戦いということを貫いてね」と繰り返し説いた。猪木さんは佐山に「村上にプロレスを教えるな」、村上には直接「プロレスは街のケンカだと思え」と伝えた。猪木さんの側近で、魔界倶楽部で総裁と仰いだ星野さんは「おまえはいいよ!おまえだからいいんだよ!」といつも言っていたという。

 村上は彼らの言葉を「感じたままリングで表現しなさい」ということだと解釈し、バックボーンである柔道の投げ技とサブミッション、殴る蹴るで試合を組み立てている。佐山は常日頃からプロレスはナチュラルでなければならないと口にしているが、それは不自然ではない、理にかなった攻防を指しており、村上のファイトスタイルもそれに通じるものだ。

 また、村上は現在、スーツ姿で試合をしているが、これにも佐山、星野さんの影響がある。佐山が主宰した格闘技「掣圏真陰流」では選手がスーツ姿で戦う「市街地型護衛白兵戦」を実施し、SSWの前身団体では試合も行われた。一方、星野総裁は常に黒いスーツ姿で決めていた。

 「僕の頭には星野総裁もいて、後付けですけど佐山さんもスーツの試合をやっていたなと思って着ている。道着として使えるなと、考える幅も広がっています」

 村上は意図せず佐山の思想を実践していた。

 猪木さん、星野さんは既に亡く、佐山は体調がすぐれない。彼らや前田日明氏の薫陶を受けた村上は、今の日本プロレス界における自身の役割をどう考えるのか。

 「単純明快です。着けるプロレスではなくて、そぎ落とすプロレス。長州(力)さんならラリアット、藤原(喜明)組長ならアキレス腱(けん)固めみたいな、ホントに一つ二つ(の技)の中で感情の戦いは伝えたい。僕らが心を動かして戦わないとお客さんにも伝わらないし、心を動かす試合をしたい。(猪木さんや星野さん、佐山らが)『まんまでいいよ』『感情のままでいい』と言うのはそこだと思う」

 プロで30年戦い続け、50歳になった村上は「1試合1試合が本当に最後じゃないですけど、そういう気持ちで戦っています」と言う。背景に通じるものがある船木戦では、村上の集大成ファイトが見られそうだ。(デイリースポーツ・藤澤浩之)

 ◆村上和成(むらかみ・かずなり)1973年11月29日、富山県出身。95年に総合格闘家デビューした。97年にPRIDE旗揚げ戦で勝利。98年にUFOでプロレスデビューした。2002年に魔界倶楽部入り。05年にビッグマウスラウド入り(06年崩壊)。08年からアウトサイダーでプレゼンターや警備責任者を担当。俳優としては朝ドラ「梅ちゃん先生」「とと姉ちゃん」、大河ドラマ「麒麟がくる」「青天を衝け」「鎌倉殿の13人」などに出演。186センチ、110キロ。A型。

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