【野球】最優秀中継ぎの阪神・湯浅「あの期間がなかったら」 “1軍完走”支えた10日間

阪神・湯浅京己
 鳴尾浜で笑顔でキャッチボールする湯浅=6月
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 「あの期間がなかったら、自分でもどうなっていたんだろうと思います」。最優秀中継ぎを獲得した阪神・湯浅京己投手(23)がそう振り返るのは、6月中旬に疲労回復を目的に出場選手登録を抹消された「リフレッシュ抹消」の10日間だ。

 プロ4年目の23歳は、入団後から腰椎の疲労骨折など度重なるケガを乗り越えてきた。1軍デビューした昨季は登板3試合に終わったが、今季はチーム最多59試合に登板し、初めての“1軍完走”となる。「1年間やる厳しさは改めて痛感した」と右腕。特に交流戦中は疲労の影響が投球にも現れた。「フォアボールが多くて、投げても今までと違う感覚というか。ストライクが入らないんじゃないかなっていう感じで投げていた」と明かす。

 そんな時、設けられた「リフレッシュ抹消」について金村投手コーチが経緯を語る。

 「去年も優(岩崎)を1度抹消したけど、年間通して考えた時にちょっと状態が落ちてきた時にやるべきことだなと、すごい感じて。パフォーマンスが出せないピッチャーを出すよりは、しっかり休まして体を良い状態にしてから、またどんどん送っていった方が本人のためにもなるし」

 抹消期間にはコンディショニングコーチや安藤2軍コーチらに相談しながら、有酸素運動を多めに取り入れるなど全身の疲労回復に努めた。「最初の何日間かはオフ気分って感じで過ごしてました」と気持ちもリセット。日頃は緊張感あるブルペンで試合を見守っているだけに「自分の部屋でリラックスして見て、ただ一野球ファンとして応援してる感じ(笑)」と心身ともにリフレッシュした。

 後半戦の状態について湯浅は「ずっと良い」と手応えを実感。7月2日・中日戦から28試合連続無失点でレギュラーシーズンを終える圧巻の結果を残した。金村投手コーチも「ピッチングはうまくなっているなと。疲労との付き合い方も、すごい時間かけてやっているんで、大したもんやなと思っています」と称賛する。

 実は湯浅の「リフレッシュ抹消」は、当初もう1度設けられるプランだったという。「京己(湯浅)に関しては、ケガが多い選手だし、実質1年目で(登板数が)ここまでとなると」と同コーチ。ただ、「チーム状況的にもできなかったし、登板後にうまく(登板期間を)空けながら。京己のコンディションもそんなに悪くなっていないということを考えた時に…」と結果的には至らなかった。

 その好調の裏には、抹消期間を経て加えた変化がある。1つは前腕のアイシングだ。湯浅は「固まって重くなる感じがある」という理由から、故障経験のある腰以外の、肩肘のアイシングは行わない。代わりに、コンプレフロスというゴムバンドを巻き付けて圧迫し「一気に解放して血流を良くする」という方法で登板後のケアを行っている。だが、疲労が蓄積していた時期は前腕の張りが顕著となり投球に影響したことから、翌日に試合がない登板日のみ前腕のアイシングを行うようになったという。

 もう1点、より意識するようになったことがある。それは「キャッチボールで必要以上に全力で投げない」ことだ。「マウンドで最大のパフォーマンスを出すためにいろいろ考えた時、投げすぎない方が良いんじゃないかなと思って」。前腕の張りが生じないように「体の使い方とかを意識して軽く強いボールを投げるイメージ」を持つようになった。

 湯浅の飛躍を支えた10日間。ただ、金村投手コーチは若干の後悔を口にする。「年間を通してマネジメントしてあげて、50試合でみんなが疲労を分散しながらやっていくのが理想。でも、試合展開とかによって行かないといけない時もある。そこが、もうちょっとうまくできたかなというのは心残り。京己も登板過多というのは否めないところはある」。やはり理想は、抹消せずとも1年間を戦い抜けることだ。そのために、湯浅らにはオフの過ごし方についても伝えているという。

 「肩をリセットする作業は絶対にしなきゃいけない。若いから大丈夫とかじゃなく、気付いた時には遅いから。肩の構造、仕組みをしっかり勉強して理解して、(自分にとって)良いなというものが絶対あるので」

 湯浅自身ももちろん、今季の経験を無駄にはしないつもりだ。「1年だけじゃ何の意味もない。このオフが大事になってくると思いますし、来年1年間やるためにはどうすれば良いかシーズン終わったら考えながら過ごして、来年の開幕にしっかり合わせられるようにしたい」。鮮やかに色づき始めた野球人生。プロ選手・湯浅京己の物語は始まったばかりだ。(デイリースポーツ・間宮涼)

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