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【スポーツ】元女子世界王者・真道ゴーの語る生き方 男性ボクサーでリング復帰へ異例挑戦

 男性となったボクサー、真道ゴー(グリーンツダ)を5年ぶりに取材した。元WBC女子世界フライ級王者は2017年に引退し、性別適合手術と戸籍変更を経て現在、男子としてリング復帰を目指している。苦悩しながら前を向き、挑戦を続ける34歳の語るジェンダーには重みがあり、考えさせられた。

 真道は身体的性別と性自認が一致しない性同一性障害を抱えて生きてきた。生活上、身体的性別で扱われることに違和感があり、精神的な苦痛を受けることが多く、18、19歳の頃には「自殺」を考える日々だったという。

 もっとジェンダーに対する理解が深まれば、と記者の質問に真道は本音でこう返した。「これまで、うれしかったのは『関わったらいいやつやん。俺らとなんも変わらんやん』と言われた時。『苦しかったな』とか言われるよりも私はうれしかった」。

 周囲の厳しい目や、差別にもさらされてきた。「違う生物と思われていたのが、そうじゃないんだと。性同一性障害はただの側面。ただ持っているだけでほとんど何も変わらない。そこを大きくとらえるから、何かぎこちなくなる。そういう人と見るのではなく、一部のこと」。

 他人のことを理解するのは難しい。「違いを認め合えたらいい。違うから仲良くしないとか、だから生きにくくなる。いざ、じゃあ自分の子供が当事者になったら、初めて考えるし、初めて分かることがある。すべての人が理解できるものじゃない。自分の考えがすべて正しいと思うのは違う。みんなそれぞれ自分の考えがあるし、生き方がある」。

 前代未聞の挑戦を他人は理解できないかもしれない。それでも真道自身は、あくまで自身の道を突き進む。「そこ(ジェンダー)を意識しているかというと全然意識していないから。自分がしたいからする」。真道の生きる道はボクサー。だからリングに戻りたい。

 女、男、戸籍、誰よりこだわり、傷ついたのが真道の人生だった。だが今は違う。「男とか女とか、誰かを見返したい、男のリングに上がるべきとかじゃない。自分の気持ちに素直にしたい。本当にボクシングが好きやし、女子としてのボクシング人生は右に置いといて、一から、一ボクサーとして、挑戦してみたい。恐怖も楽しさも、もう一度感じて、自分と向き合って、自分を追い詰めて、やってみたい。ただ本当にしてみたいと、今を生きてみたい」。

 真道は4歳の男女の双子、1歳の次女を持つ3児の父。長男はボクシングをやりたがっている。「(子供に)リングに上がってるところを見せていないなと。それは見せてやりたいなと」。父親が戦う姿を目に焼き付けてほしい思いもある。

 半端な覚悟ではない。年齢も7月に35歳。パワー、スピードが男子のリングでは簡単には通用しないことは分かっている。「10年間ボクシングをしてきて、ある程度の引き出しを考えて。トレーナーに言われたことを一つ一つ欠点を直して。焦らずに一からコツコツと形にしていく」。

 女子時代は生粋のファイターだったが、目指すのは打たせずに打つスタイル。世界最速の3階級世界王者・ロマチェンコ(ウクライナ)、4階級世界制覇王者の井岡一翔(志成)の映像を見て、学んでいる。

 陣営は4月下旬にプロテスト受験を申請した。JBC(日本ボクシングコミッション)が受験の可否を審議し判断する。真道は5月の受験は断念し、7月に向け準備している。

 安全面や、定期的に投与の必要がある男性ホルモンがドーピングに該当するのかなど、簡単には結論は出ない。それでも、真道は素人ではない。ボクシングの怖さ、危険性を知り尽くしている。

 いずれの判断にしても賛否両論は出るだろう。ただ「本当にボクシングが好き。あきらめずに前を向く」と言う1人のボクサーの熱き思いに向き合った答えであってほしい。(デイリースポーツ・荒木 司)

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