【芸能】コロナ禍の心と体に、音楽で癒しを バウワウ・山本恭司

山本恭司
3枚

 ハードロックバンド「バウワウ」のギタリストとして世界的に知られる山本恭司(65)が昨年、ニューアルバム「HOPE IS MARCHING ON」をリリースした。コロナ禍で落ち込む人々を癒やしたい、そんな思いから生まれた安らぎのアルバムについて、山本に聞いた。

 本作は新録のスタジオテイクが5曲(4曲が新曲、1曲がサン=サーンス『THE SWAN(白鳥)』)、2020年1月に大阪でフルオーケストラと共演したライブテイクが6曲の全11曲で構成されている。

 制作のきっかけは昨年の正月、友人の車中でかかったピアノ曲に安らぎを感じたことだった。「今、自分はこういう音楽を心底求めている。去年から起きている色んなことのストレスとか、ままならぬことに、体は元気だとしても心が落ち込む感じになっていたんじゃないのかな。それは僕だけじゃないはず」と気付いた。

 「音楽が持つ治癒能力というか、音楽を聴かせて涙を流したり、笑みが浮かんだり、心に作用するってことは体にも何かしらの影響があると思うので、心も体も癒やせる音楽を作りたい」と着想。

 「自分を癒やしてくれるものっていうと、故郷があって。僕は松江市出身だから、1曲目(『CASTLE IN THE SNOW』)は雪をかぶった松江城のイメージが浮かんで、それは春を待っているというように聴いてもらえれば、その図が皆さんの心に浮かぶ気がする。

 『THE SWAN』は、松江城のお堀にはいつも白鳥がいて、子供の頃から白鳥を見に松江城まで行っていた記憶があって。

 『KAKIMOMIJI』は、実家の中庭に植えられた柿の木が大きくなりすぎて、真ん中辺りから斬られたりした。そこから枝を伸ばして今年ちゃんと実がなっています。活動を中断された僕らも斬られたようなもの。そこから少しずつでも枝葉を伸ばして、柿は実を実らせて次世代へつなげようとするし、僕らもそうあるべきだなと、インスピレーションを受けつつ。

 皆さんも心の故郷というか魂の故郷というか、絶対にあると思います。そういったものに包み込んでもらって癒やされる空間を、音楽で提供できたらいいなと思って」

 本作は、スタジオ録音パートでは「白鳥」、オーケストラパートではプッチーニの「O MIO BABBINO CARO」、2曲の「アヴェ・マリア」と、クラシックが11曲中4曲を占める。

 「(オーケストラとのテイクは)生の弦の持つ響きは、僕のテーマにつながる癒やしを持っていて。(クラシックは)普遍的な美しさがあるからこそ愛され続け、演奏し続けてもらっている。全て新曲よりも、『あ、このメロディー』って思われると、例えば幼い頃の記憶がよみがえったり、そういう効果もあったりするかな」

 オリジナル曲とクラシック曲は、自然につながっている。

 「後々クラシックになり得るつもりで書いたから、どの曲も、オーケストラが入ってもおかしくない曲だと思う。時代は100年200年違うかもしれないけど、生意気を言わせてもらうと、あの頃の人たちと同じ気持ちで音楽を愛して、時代も人の心もこうなってほしいなっていう願いを込めて、書いて演奏しているのかもしれない」

 4曲目の「FOCUS ON OUR FUTURE」と、最終11曲目のタイトル曲は荘厳なナンバーだ。山本はアナログレコードのA面の最後、B面の最後を意識してこの曲順に置いたという。

 「5年後、今起きていることなんて『あんなこともあったよな』って思っていると思う。自分の人生を未来から俯瞰(ふかん)してみるって、すごく大事なんじゃないか。そういった気持ちも込めて『FOCUS』というタイトルであり、希望に満ちた終わり方をする曲を作りました。

 最後に希望につながる『HOPE IS MARCHING ON』というタイトルを決めていたので、最後の曲は余韻としても、スネアロールから始まる、何かが行進をしているイメージにぴったりなんじゃないかなと思って。そうしたらきちっとした、映画のような流れができた気がしています」

 コロナ禍による落ち込みから希望へ。山本恭司は、音楽の力を信じて進む。(デイリースポーツ・藤澤浩之)

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