【芸能】ニッポン放送局員が見切れる?ラジオを広げる配信公演「あの夜を覚えてる」

 ニッポン放送の看板深夜番組「オールナイトニッポン」が55周年を迎えるのに際して、同局はラジオ局を舞台にした演劇を生配信する。ラジオ番組の枠にとどまらない企画をどんな狙いから進めているのか。同局のイベントプロデューサーを担当している石井玄(いしい・ひかる)さんに聞いた。

 今回の公演のタイトルは「あの夜を覚えてる」。舞台はニッポン放送。「オールナイトニッポン」をモチーフに、「すべてのラジオリスナーに贈る『あの夜』の物語」と銘打った演劇で、総合演出は昨年、テレビ東京からフリーになった佐久間宣行氏。主演は千葉雄大に高橋ひかる。zoomなどリモートのインフラを用いた演劇公演で知られる「ノーミーツ」とのタッグで、小御門優一郎氏が脚本・演出を手がける。

 ただ、どんなドラマなのか。そもそもイベントなのか、タイトル通り公演なのか、ぱっと聞いただけでは判然としない。石井さん自身も「この企画はちゃんと聞いても意味分からない企画だから」と“ぶっちゃけ”ながら、説明してくれた。

 「この辺を、社員の“エキストラたち”が映るわけですよ。仕事されてる方はいるから。(公演する)お知らせは出しますけど。その時間、別の生放送をやってたりするわけですから。日曜も業務はあるわけですから。そういうのが映り込んだりするのも面白いよねと思って」

 つまり、ラジオ放送局のリアルを、演劇のフィルターを通して、リスナーに繋げる、という内容になる。「例えば、ここにカメラが置かれるわけなんです。で、演技をするんです。役者さんが。で、演技をして、そのシーンが終わったらスイッチングをして、ブースでしゃべっているトークがあって。その間に、役者さんが移動をして次のシーンの準備をする、みたいなことをリアルタイムでやっていって。番組のシーンではメールとかも募集できるから」。まるでラジオの現場を体験しているような内容になるかもしれない。逆に言うと“ノーミーツの演劇のファンだけど、ラジオはあまり知らない”層にも響く可能性がある。

 石井さんは「(ラジオを)聞くことが、かっこいいことになっていったらいいな」という願いを持っているという。「星野(源)さんとか、菅田(将暉)くんとかを中心に、佐久間さんもそうですけど。インフルエンサー的な動きができる方が、ラジオって面白いんだよ、ラジオ聴いている人ってかっこいいんだよ、みたいなことを話してから、女性が普通にラジオを聴いているという発言をできるようになったというか」。時には、番組発のアパレルグッズがきっかけで、ファッション雑誌から取材が来ることもあるという。ラジオならではの「すみっこというか、一部分を切り取って楽しんでいる感じ」(石井さん)という魅力を損なわないように、でも「もうちょい広まった方がいいなという気はしているので」という意識でいる。

 TBSラジオとの共同で募集された「にこるん、みちょぱの校内放送」(すでに募集は終了)でも石井さんは人と人をつないだ、という意味で、少しだけ関わった。TBSラジオに番組を持つ藤田ニコルと、ニッポン放送に出演している池田美優とのコラボで、全国の中学・高校の校内放送を両局でつくるというものだ。

 以前、同じ番組を担当していた若手スタッフから「学生がラジオを知るきっかけをつくりたい」という連絡が来て「一緒にやった方が伝わるよね」と、両局の取り次ぎをしたという。「そういうことをやっていかないとダメかな」と、局の垣根を越え、メディアの媒体も越えて発信する意義を感じている。

 「今、35(歳)ですけど、40になるまでにそれをやって。40からはその人たちが頑張っているので、食わせてもらうっていう(笑)」という野望も持ちつつ、46才で“ド深夜”の生番組パーソナリティーを担当する佐久間宣行さんのことも頭にちらつく。

 「あの年までやんなきゃいけないんだって。ああそっか!と思って、全然だめか!」

 時には他局の若手ディレクターから「番組が終わりそうなんですけど」と相談されてしまうこともあるというが、「そういう人が増えたら、もっともっと盛り上がって。一人では手が足りないなという気がしてきたので。下の世代が盛り上がって、一般化してくるのかなと思います」。世代や、メディア、放送局まで、いろいろな壁を乗り越えて、新たなラジオが生み出されていく。(デイリースポーツ・広川継)

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