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【野球】今も耳に残るあの音 1985年のKKドラフト

 ドラフトで巨人から指名された桑田(中央)=1985年11月20日
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 今もあの音が耳に残っている。「読売。桑田真澄。投手。17歳。PL学園高校」-。そのアナウンスの直後、会場内に響き渡った、一斉にイスを引いた音である。

 2021年度プロ野球(NPB)新人選手選択会議「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」(ドラフト会議)が10月11日、都内で行われる。今回で57回目となるが、今年は高校生にも逸材が多く、ノースアジア大明桜の風間球打、市和歌山の小園健太、高知の森木大智らに注目が集まっている。

 長年ドラフト会議取材に携わってきたが、今でも鮮明に記憶している光景がある。1985年の第21回ドラフト会議である。

 その年、ドラフト会議が行われたのは11月20日。会場はJR飯田橋駅から徒歩圏内にある「ホテルグランドパレス」だった。

 当時、携帯電話はほとんど普及しておらず、マスコミ各社は、ホテルの別室にその日1日だけ臨時電話、いわゆる「臨電」をひき、会社との連絡に当たっていた。FAXもあるにはあったが、性能的には15字×5行の原稿用紙を1枚ずつ送信するのがやっとの代物だった。その「臨電」の前には、ほとんどの社が現場でデスク作業を行うプロ野球デスクが陣取り、会社との連絡に当たっていた。

 会議場に入れるのは各社1人だけ。大半の記者は、その別室に用意したテレビの前で進行を見守るか、会議場の扉に耳を付けて中をうかがっていたことになっていた。私たちは交代で会場内に入り、その中で起きた出来事を逐一、別室に座る現場デスクに報告することが仕事だった。

 その年の注目は、在学中に優勝2回、準優勝2回と甲子園を席巻したPL学園の清原和博、桑田真澄のKKコンビの動向だった。

 清原は早くからプロ入りを表明し、尊敬する王貞治監督(現ソフトバンク会長)が指揮する、巨人への入団を希望してた。

 一方、桑田は早稲田大学の入学特別選抜試験を受けることが決まっており、強硬指名を模索していた球団も回避するものと思われていた。

 私は当然、巨人の1位指名は清原だと思っていた。ところがである。当時、パ・リーグの広報部長だったパンチョこと伊東一雄さんが、巨人の第1回指名選択選手として読み上げた名前が、なんと「桑田」だったのである。

 その瞬間だった。私を含め、会場内でドラフト会議の進行を見守っていた記者が、イスを引いて会議場出口に向かって走りだした。われ先にという言葉がピッタリ。そして、別室まで全速力で走って「臨電」に飛びつき「巨人の1位は桑田です」と、口々に報告を始めたのである。

 その後、何度もドラフト会議の取材に参加したが、ホテル内を全速力でダッシュしたのは、そのときが最初で最後だ。

 その後、何年かたって巨人担当として桑田を、西武担当として清原を取材することになった。だが、どんなプレーを見せられても、あのドラフトの日ほど2人の名前に興奮したことはないかもしれない。今年はどんなドラマが生まれるのか、楽しみである。=敬称略=(デイリースポーツ・今野良彦)

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