【野球】阪神・岩田稔引退にプロへ導いた伝説の剛腕投手は…

 秋山(左)から花束を贈られ号泣する岩田稔
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 阪神の岩田稔投手(37)が1日、兵庫県西宮市内のホテルで引退会見を行った。会見で「肩の荷が下りた感じです」と語った岩田と同じ思いでいたのが、入団時の担当スカウトで投手コーチも務めた山口高志氏だ。岩田にとっては母校関大の大先輩にあたる。現役時代は阪急ブレーブスの剛腕投手として活躍したレジェンドだ。現在は関大野球部でアドバイザリースタッフを務め、後輩たちを指導している。

 岩田から数日前に電話で引退報告を受けたという山口氏。「電話をもらった時の声が明るかった。満足してユニホームを脱げるんやなと。プロの世界に導いた担当スカウトとしては、それが一番うれしかった」という。

 大学時代の岩田をスカウトとしてネット裏から視察し「投げているボールそのものはプロでも通用する」と確信。1型糖尿病を抱える選手を球団内の編成会議で推薦するために、岩田側の許可を得た上で主治医とも会って情報を集めた。当時の山口氏と主治医とのやり取りは、ざっとこんな感じだったという。

 山口氏「先生、岩田の1型糖尿病はプロに入ったとしても問題ないものなんでしょうか?」

 主治医「岩田君は血糖値もしっかりとコントロールできていますし、健康体と何ら変わりありません」

 山口氏「大丈夫ということですか?」

 主治医「絶対に大丈夫です。絶対です」

 編成会議では主治医の言葉がそのまま報告された。説得力十分の証言を得て、阪神球団は岩田獲得を決断。2005年度大学生・社会人ドラフト希望枠での入団に至った。

 ただ、入団後も山口氏の心配は尽きなかった。「1型糖尿病ということでチーム内でもどう接したらいいかという戸惑いがあったやろうし、慣れるまでは本人もしんどかったと思う」と山口氏。1年目は1試合の登板で0勝1敗、2年目は4試合の登板で0勝1敗。なかなか結果を出せない中で臨んだ2007年秋季キャンプでのことだった。岩田の投球を見た当時の岡田彰布監督(現デイリースポーツ評論家)が「来年はいける」と、翌年の活躍を予言した。山口氏は「それを聞いてホッとしたのを覚えている」と振り返る。

 岡田監督の見込み通り、勝負の3年目となった2008年にプロ初勝利を含む10勝を挙げて一気に飛躍。その後は先発ローテーションから外れることもあったが、粘り強く何度も復活して60個の白星を積み上げてきた。主治医が「絶対に大丈夫」と太鼓判を押した通り、厳しいプロ野球の世界でベテランと呼ばれるまで現役生活を全う。チャリティー活動にも積極的に取り組み、同じ病気と闘う人たちの「希望の星」であり続けた。

 「16年もようもってくれたよ。本当にご苦労さんやな」

 山口氏にとっては、担当スカウトとしての責任を終えた引退会見でもあった。(デイリースポーツ・岩田卓士)

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