【相撲】引退決断も白鵬の心残りは?8年前の取材メモから見つかった答え

 大相撲の横綱白鵬(36)=宮城野=が45回の優勝、16年連続優勝、横綱899勝など前人未踏の大記録を残して引退した。2000年に15歳で相撲界に飛び込んだ時はほっそりとした少年だった白鵬が、何をきっかけに不世出の大横綱へと飛躍を遂げたのか。今から8年前の13年、白鵬に単独インタビューした取材メモを振り返ってみると、ひとつの答えが見つかった。

 取材をしたのは同年1月場所前だった。白鵬は既に北の湖に並ぶ24回の優勝を果たしていて、すっかり大横綱の雰囲気を身につけていた。私は単刀直入に聞いた。

 -横綱は優勝回数で北の湖に並びました。一体何をきっかけにそれほどまでに強くなったのですか?

 白鵬はほとんど間を置かずに口を開いた。

 「私の相撲人生で一番大きい出来事は連勝記録のストップだね。負けた瞬間は夢ならいいのにと思った。双葉山に並ぶのか、超えるのかという時に負けた。だからいろんなものを考えさせられた」

 その時、白鵬の脳裏に浮かんだものは10年11月場所2日目に稀勢の里に寄り切りで敗れた相撲だった。その年の初場所14日目の琴欧洲戦から始まった連勝記録は、11月場所初日の栃ノ心戦で63まで伸びていた。当時、白鵬が目指していたのは尊敬する大横綱双葉山が持つ最多連勝記録の69連勝。ようやく追いつき追いすことができるかというときの黒星は、忘れたくても忘れられないものだったに違いない。

 -稀勢の里戦を覚えていますか?

 「あの稀勢の里との一番は自分の相撲を取ったつもりではありましたけど、勝負の厳しさでしょう。一瞬で展開が変わった。自分は勝ちにいく相撲は取らないのですが、あの時は慌てて勝ちにいったんですね」

 双葉山は39年1月場所4日目に安藝ノ海に敗れて連勝が69で止まると「われいまだ木鶏(もっけい)たりえず」と知人に電報を送ったという。白鵬はどうだったのか。

 「次の朝自分を奮い立たせて朝稽古に励みました。やはり勝ち負けというよりも大事なことは常に精進努力していくということ。最後はその場所で優勝することができましたけど(稀勢の里に)負けて土俵に上がる気持ちがさらに強くなった。相撲を取る喜びっていうのかな」

 白鵬が69連勝にこだわった理由はもうひとつあった。それは他愛のない数字の語呂合わせみたいなものだった。

 「双葉山関は69連勝。私は第69代横綱でね。こういう縁がありますから。残りの相撲人生、この縁だけで頑張っていこうかなと思っています」

 あの取材の日から8年余り。白鵬は稀勢の里戦の黒星を弾みとし、さらに21回の優勝を積み重ね、大横綱の中の大横綱にまで上り詰めた。土俵内外の言動でその価値を自ら落としてしまったのは残念だが、数々の記録だけでなく、当時騒動続きだった角界をひとり横綱として支え抜いたのは紛れもない事実。今後は親方として後進の指導に当たるそうだが、ぜひとも双葉山の69連勝を塗りかえるスーパー弟子を育成してほしいと思う。(デイリースポーツ・松本一之)

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