【競馬】四位元騎手の功績 センターライジングが初めて行った調教とは

 今週は秋のG1シリーズ第1弾・スプリンターズSが行われますね。ヨカヨカの電撃引退は残念ですが、今年も好メンバーが顔をそろえました。その中で、昭和の競馬で育った私が最も興味をそそられるのが、奥深い母系が魅力のエイティーンガールです。

 同馬の牝系を紐解くと、3代母は88年新潟記念を制したダイナオレンジ。400キロそこそこの小さな体でタイトルをつかんだ根性娘でした。そして、本馬に最も影響を与えていると思われるのが、96年4歳牝馬特別(現・フローラS)を制した祖母のセンターライジングです。

 ここからが本題。当時、同馬の主戦を務めた四位師に話をうかがうと、非常に興味深い話を聞かせてくれました。

 「センターライジングは思い出深い一頭です。今でこそみんな普通に角馬場(柵で周囲を囲った1周200~600メートルほどの小さな馬場。準備運動などに用いる)で乗っているけど、当時は誰も使ってなかった。函館出張中、伊藤雄二先生が僕に調教を全部任せてくれたから、以前から試してみたかった馬術的要素を調教に取り入れてみたんです。いわば、あの馬が角馬場調教第1号ですよ」

 何せ初めての試み。「周りからして見れば“あいつ、何してんだ?”って感じだったよね」と笑うが、信念がブレることはなかった。「馬と対話をしながら一つずつ競馬を教えていってね。重賞を勝ってくれたし、それなりの結果を残すことができた」。独りぼっちで始めた角馬場調教は、のちに横山典騎手がその後に続いたそう。さらに輪は広がり、今となってはスタンダードな調教風景となりました。日本競馬の進化を考えると、思い切った一歩を踏み出した四位騎手の功績は非常に大きいと私は思います。

 ちなみに、センターライジングの感触について「すごく身のこなしが柔らかかった。そして切れ味があったよね」と四位師は話していました。恐らく、祖母の長所が隔世遺伝で孫のエイティーンガールに受け継がれたのでしょう。人にも馬にも歴史あり-。ひとつの牝系を通して、多くのことを学ばせていただきました。やっぱり競馬は奥が深いですね。(デイリースポーツ・松浦孝司)

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