【競馬】新種牡馬シルバーステート産駒に託す夢の続き

 7月12、13日の日程でセレクトセールが開催された。今年デビューする新種牡馬の産駒は、セール前のレースぶりや結果が重要になると、よく耳にする。ストレートに市場に反映することも多いからだ。好成績を残せば、翌年以降の繁殖牝馬の質にも影響する。ディープインパクト、キングカメハメハ、ハーツクライが去った種牡馬界の、新たな争いは既に始まっている。

 産駒のデビュー前に、生産界から高い評価を得ていた新種牡馬がいる。シルバーステートだ。現役時代は故障もあって5戦4勝でターフを去ったが、その戦績以上に『未完の大器』として注目を集めた好素材。7月11日現在で産駒はJRAで4勝しているが、その戦績以上に評判がいい。

 受胎条件で18年度は80万円、19年度は100万円、20年度は120万円で、21年度も150万円で満口。種付け料が比較的安いのもあるが、父譲りの好馬体をした産駒が多いのも、評価の高い要因のひとつだろう。現役時代に同馬を管理した藤原英昭調教師は、「スピード、柔らかさ、全てがそろった馬だった。それが産駒にも受け継がれているんだろう」と目を細めていた。

 「あの馬自体がストライドも大きい走りだったけど、産駒も走り方が似ているね。評価が高いからみんなが付けてくれて、それが今につながっているんだと思う」と同師は馬産地の関係者に感謝する。「こっちも今までで一番と言ってきた馬。シャフリヤールも、エイシンフラッシュもすごいけど、シルバーステートもすごかった。種牡馬として結果が出てほしいし、出れば自信にもなる」と期待大だ。

 現役時代、同馬の調整に携わった田代信行調教助手は「もともと持っている能力は、かなりのものを感じていた。現役時代も無事なら、もっと大きなところで走れた馬だったから」と、その規格外の走りを懐かしむ。「スピードがあったし、前向きさもあったので、それが子どもにいい方に出ているんだろうね。距離ももつと思う」と、産駒の幅広い活躍を楽しみにしていた。

 全5戦で手綱を取った主戦の福永祐一騎手は、6月13日の新馬戦(中京芝1200メートル)でメリトクラシー(牝2歳、栗東・武幸四郎厩舎)に騎乗し、産駒のJRA初勝利を挙げた。「こういうのは騎手冥利(みょうり)に尽きるよね。お父さんはスピードがあったし、それを産駒にも伝えている」と喜んでいた。同馬は、10年カルティエ賞の欧州最優秀スプリンターに輝いた母父スタースパングルドバナーが色濃く出ている印象だが、母系の血統次第では、異なるカテゴリーでも活躍馬を出しそうだ。

 今後の産駒の結果次第では、大きな飛躍が期待できる。藤原英師が「これから繁殖牝馬のレベルが上がってくれば、さらに楽しみだね」と話す通り、さまざまな可能性を持った種牡馬だろう。今後、コントレイルなど、ディープインパクトの血を引く実績馬も種牡馬入りしていくはずだが、個人的には比較的リーズナブルな種付け料もあり、活躍の場は多いとみている。

 重賞未勝利のミスタープロスペクターやクリスエスは、産駒としてG1馬を数多く輩出した。故障などで競走馬として余力を残して引退し、種牡馬入りしたケースには成功例も多い。自らが果たせなかったG1制覇を子どもたちに-。これこそが競馬の魅力、血統のロマンだろう。現役時代にその走りに魅了された者の一人として、シルバーステート産駒に夢の続きを託してみたい。(デイリースポーツ・大西修平)

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