【スポーツ】久保建英の東京五輪代表入りで蘇る、天才・小野伸二のフランスW杯での股抜きプレー

6月12日の日本-ジャマイカ 前半、先制ゴールを決めポーズを取る久保(左)。右は田中=豊田スタジアム
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 天才タケの姿に天才シンジの記憶がよみがえった。MF久保建英(20)が、順当に東京五輪に臨むサッカー日本代表入りした。スペイン1部リーグでプレーを続ける逸材だけに、7月22日に行われる1次リーグ・南アフリカ戦のプレーから注目を集めるだろう。

 彼の実力なら五輪という大きな国際舞台でも、周囲を驚かせるプレーを連発するのは間違いない。だが、日本が初めてワールドカップ(W杯)に出場した1998年フランス大会でみせた小野伸二(41)のプレーの衝撃もすごかった。

 あの大会で日本代表はアルゼンチン代表、クロアチア代表に連敗し、すでにグループリーグ敗退が決まっていた。その中で迎えた6月26日、リオンで迎えたジャマイカ戦。この試合で74分、FW中山雅史が歴史的ゴールを決めた。小野の登場はその5分後だった。MF名波浩と交代でピッチに入った。ファーストプレーとなった左足での斜めパスは失敗だったが、その次のプレーだった。相手選手を「股抜き」で交わし、そのまま左足でのシュートにもっていったからだ。

 久保が6月12日のジャマイカ戦でみせた「4人股抜き」のスーパーゴールが話題となった。だが、このときの小野はわずか18歳で、代表から落選したカズことFW三浦知良の背番号「11」を引き継いだばかり。しかも、サッカー界最大かつ最高のイベント・W杯への初出場だった。プレッシャーは並大抵ではないはずだが、小野は当時所属していたJ1浦和でプレーしていたときのような“普段着のプレー”をみせた。

 スタンドの戦況を見守っていた私にとっては、その“普段着のプレー”はある意味、中山のゴールよりも衝撃だった。いや、当時はアルゼンチン、クロアチア、ジャマイカ戦を通じて一番驚かされたプレーだった。さすが天才と呼ばれた男と感心したが、小野なら当たり前のプレーだったかもしれない、と思っていた。

 フランスW杯の直前合宿に出発する少し前だったと思う。“密室”で小野と話すチャンスがあった。小野が普通自動車免許を取得するため教習所に行くことになり、なぜか浦和のスタッフの運転する車に同乗することになった。

 その際の会話はほとんど記憶していないが、ひとつだけ今も鮮明に覚えていることがある。何気なく「リフティングって何回できるの?」と聞いたときのことだ。われながらばかな質問をしたものだが、そのとき小野は真顔で「何度でもできます。だれかから『止めろ』というまでできますよ。一日中だって」と答えてくれた。その静かな言葉の裏に、小野の秘めたる自信を感じ、なにか背筋が寒くなり、次の言葉に詰まったものだ。

 新たな天才・久保の出現で思い起こした天才・小野の存在。その記憶は今なお、色あせてはいない。=敬称略=(デイリースポーツ・今野良彦)

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