【スポーツ】西田凌佑の比嘉戦金星に名参謀あり 六島ジム・武市トレーナーの勝算

 4月24日、大阪で今年国内初のボクシング男子世界戦が開催され、WBC世界ライトフライ級王者・寺地拳四朗(BMB)が挑戦者・久田哲也(ハラダ)に判定勝ちした。この試合とほぼ同時刻、沖縄のリングでひとつのアップセットが起こっていた。

 宜野湾市の沖縄コンベンションセンターで行われたWBOアジアパシフィック・バンタム級王座戦。王者・比嘉大吾(Ambition)が大差判定で敗れた。波乱を起こしたのはデビュー4戦目の挑戦者・西田凌佑(24)=六島=だ。3戦目に世界挑戦経験者の大森将平(ウォズ)に完勝している経歴も重なり、一躍世界を狙えるホープとして注目され始めたが、この金星を導いた参謀役・武市晃輔トレーナー(39)の存在も見過ごせない。試合後、武市トレーナーは「自分が思い描いている想定の範囲内で12ラウンドを終えられたかなと思います」と会心の勝利を振り返った。

 この王座は同門のストロング小林佑樹が保持していたが、昨年大みそかに比嘉に5回KO負け。そして小林は現役引退した。この時、武市トレーナーは残る再戦権利を西田に使えば勝算があると考えた。プロ4戦目、バンタム級での試合経験なし。不安要素は多かったが、逆にいえば、相手陣営に西田の情報は少なく、減量がうまく進めばフライ級から上げてきた比嘉との体格差は優位に働く。

 ただでさえ西田は長身サウスポーという多くの選手が苦手とする要素を備えており、独特の距離を崩すことは簡単ではない。そしてもうひとつアップセットを起こす根拠となるものがあった。「西田は感情の起伏が激しくない。いい意味で常に平常心。天然なところがあって大舞台でも浮き足立つことはない」。4戦目でのタイトル初挑戦の相手が強打の元世界王者。そして王者の凱旋試合とあれば、雰囲気に飲み込まれても不思議ではない。しかし西田は試合前の控室でアイマスクを着用して平然と仮眠を取るなどずぶといところがあった。

 果たして試合では武市トレーナーが授けた作戦を落ち着いて遂行した。試合後に「パンチはそこまで感じなかった」と語るように比嘉の強打を必要以上に恐れることもなく、自ら前進する場面も織り交ぜながら最大8ポイント差の完勝を演じた。

 武市トレーナーが陣頭指揮を執る六島ジムでは、小林、西田、世界挑戦も経験した元WBOアジアパシフィックスーパーフライ級王者の坂本真宏と、近年コンスタントに王者が誕生している。決してアマチュアエリートがそろっているわけではない。ひとつの型にはめ込んだ指導法ではなく、それぞれの選手の長所を生かしたさまざまなスタイルの選手が育っていることも特徴だ。これがジムの方針でもある恐れを知らないマッチメークと融合し、結果につながっている。

 武市トレーナーは現役時代は日本ミニマム級1位。ラストファイトは10年5月。後の世界3階級王者・八重樫東(大橋)に挑み、初回にダウンを奪いながら判定負けした。自らがあと一歩届かなかった王座に愛弟子を就かせる、関西有数のチャンピオンメーカーとなった。

 5月19日には日本ミドル級1位の国本陸が同級王者・竹迫司登(ワールドスポーツ)に挑戦する。この試合の下馬評も王者有利の声が多い。当然ながら陣営は再びのアップセットを狙っている。

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