【将棋】藤井二冠朝日杯V裏側は…? “観る将”記者の初現地取材

 将棋の藤井聡太二冠(王位・棋聖=18)が2月11日、第14回朝日杯オープン戦で2年ぶり3度目の優勝を果たした。1月に将棋担当に配属されたばかりの“観る将”でもある記者は、ほぼ初となる現地取材に挑んだ。

 報道陣はホール外のロビーで待機していたのだが、準決勝の振り駒前に対局者たちが現れた。スーツ姿だったのもあるだろうが、藤井二冠の第一印象は「普通の高校生だな」というものだった。少し緊張したような、けれども凜(りん)とした面持ちで会場に向かった姿に、こちらまで背筋が伸びた。

 対して渡辺明三冠(名人、王将、棋王=36)は真逆で「やはり名人。オーラがすごい」という印象。対局者の中では小柄な方だが、それ以上に大きく感じる。準決勝敗退後もあまり変わらず、ひょうひょうとした様子で関係者と談笑していた姿が印象深い。

 準決勝は渡辺三冠と対戦し、評価値1対99からの大逆転勝利。終局後すぐ会場に入るため、カメラマンや記者はホールの扉横に集められた。10~20分ほどたっても一向に終わらない対局に、ザワザワしながらABEMAや棋譜速報で見守る。

 一手で評価値が真逆に振れた時「え?」と声が漏れた。誰もが敗北を疑わなかった展開からの大逆転に「やっぱり藤井二冠はすごい…」と興奮まじりで、将棋に詳しい記者に解説してもらいつつ、みんなでぼうぜんとした。

 終局は12時31分。その後に会見も行ったため、14時の決勝開始までは1時間ない中で、ほぼ負けで用意していた原稿を書き直す記者や、「決勝行きました…」と会社に連絡するカメラマンらでホールは慌ただしかった。「お昼はのんびり食べられると思ってたのに」と言い合ってた罰(ばち)があたったのか、昼食も取らないまま決勝戦の取材に向かった。

 決勝では三浦弘行九段(46)と対戦。またも中盤は藤井二冠の苦しい展開に。報道陣は取り損ねたご飯を食べに行ったり、朝が早く、バタバタした準決勝の疲れもあったのかソファで仮眠を取ったりして、静寂の時間が続いた。決勝でも準決勝ほどではないが終盤に逆転する展開に。予定原稿が二度も吹き飛び、記者泣かせだなぁと思いつつ、優勝インタビューで少し表情が緩んだ様子の藤井二冠を見てほおが緩んだ。

 当日は聖火ランナー辞退のニュースが出たばかりで、優勝インタビューはその話題が多く取り上げられた。16日には高校中退も発表された。最年少記録を打ち立てても、強敵を撃破しても「いい将棋を指したい。将棋に精進したい」と受け答えは変わらない。

 報道陣の問いかけをいい意味でスルーしつつ、誰に対しても敬意を持って接する姿は、高校生というにはあまりに大人びているように感じる。強い相手との対局が増えても、公式戦15連勝中と止まらない18歳。これからも目が離せない。

(デイリースポーツ・中井里穗)

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