【スポーツ】無念の欠場・東山 コロナ禍で“最初で最後の全国大会”に懸けた思い

 新型コロナウイルスの影響により学生スポーツ界では、全国大会などの中止が相次いだ。そんな中、コロナ感染対策を講じた上で代替大会や例年実施されている冬の全国大会の開催が決定。インターハイ、国体が中止となった高校バレーボール界も全日本高校選手権大会(春高バレー)を開催し、本年度“最初で最後の全国大会”に懸けるチームが多かった。

 大会開催に喜びや感謝の声を多く聞いた一方でバレーボールだけでなく、さまざまな競技で新型コロナによる“無念の欠場”という形で大会を去る高校も少なくはなかった。バレーの全日本高校選手権に優勝候補の大本命として出場した強豪・東山(京都)もその一つだ。

 東山は昨年大会で、現在日本代表に選出されている高橋藍(日体大)がエースとしてチームを引っ張り初優勝。連覇を目指す立場となった。高橋が卒業し、絶対的エースの不在が欠点となったが、主将の吉村颯太(3年)は欠点を補うため「全員が点数を取れるチームを作ってきた」と全員バレーで全国の舞台に戻ってきた。

 同大会は出場登録選手18人以外の選手に入場制限がかけられ、保護者も来場不可など完全無観客で実施。いつもと違う全国大会の雰囲気が漂う中、東山は初戦の2回戦をストレート勝ちで突破した。好発進となり、さあここから、というときに衝撃が走った。

 3回戦の第1試合、高松工芸(香川)との試合開始時間になってもコートに東山の姿は見えなかった。当日の朝の検温で選手1人に発熱を確認。残りの選手で会場入りしたが、大会実行委員側の判断で欠場となった。その後当該選手はコロナ感染が判明。2日後には新たに選手5人の感染が確認された。

 東山は11月中旬の京都府予選終了後からコロナ感染のリスクを避けるため対外試合は一切しなかった。2回戦終了後に豊田充浩監督(52)は「開催が決まって確かに喜んで、強化で練習試合をしていくぞという気持ちもでてくるけどしっかり抑えて。健康安全でこの日、試合ができることを最優先した」。予定していた練習試合は全てキャンセルし、チーム内で強化を続けたという。

 また、高橋らOBからの練習手伝いも全て断った。同大会前にOBが在籍する日体大で調整した際も「OBの子、4年生の子とかいたけど、フロアで手伝わずに観客席で見ていました」と豊田監督。誰よりもコロナ感染に細心の注意を払い、考えうるリスクを徹底して排除してきたからこそ、悔しさは計り知れないものだっただろう。

 2回戦終了後には豊田監督は「この日、この場所に立ててバレーができることを信じて、子どもたちも私も頑張ってやってきた」。主将の吉村も「コロナの状況の中で18人の(選手の入場)制限がかけられて、こられていない部員もたくさんいる。その子たちの思いも18人が背負って戦わないといけない」とコロナ禍で開催された2020年度“最初で最後の全国大会”に懸けた思いを語っていた。

 私自身高校時代にソフトボールで全国大会を経験しており、競技は違っても全国大会に対する思いは痛いほどわかる。ましてや、3年生にとっては高校生として本当に最後の全国大会。まさかの形で高校バレーに幕が下ろされ、下を向き、泣きながら会場を去って行く東山の選手を見て、やるせない気持ちになった。

 コロナ禍でさまざまな制限を強いられた1年。現在もコロナ感染拡大に歯止めがかかっていない状況だが、学生が力を発揮できる大会が一つでも多く開催されるとともに、これ以上“無念の欠場”がなくなるよう、一刻も早いコロナ終息を願うばかりだ。(デイリースポーツ・森本夏未)

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