【野球】飯田&岩本スコアラー 広島の新人スコアラーの1年を振り返る

 ネット裏で試合を観戦し、データ収集をする飯田スコアラー=天福球場
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 広島の新人スコアラーの1年が終わった。今季から新設された、強化選手を指導する2・5軍に配属された飯田哲矢スコアラー(25)は、動作解析などで選手の課題を見つけ、克服を後押し。島内や矢崎を1軍に送り出した。ヤクルトを担当した岩本貴裕スコアラー(34)は、14勝7敗3分けとチームの対ヤクルト戦勝ち越しに貢献した。新しい職場でチームを支えた今年を振り返ってもらった。

  ◇  ◇

 選手のデータを集めたり、映像を分析したりするのが飯田スコアラーの仕事だ。「みやざきフェニックス・リーグ」でもシーズン同様、忙しい日々が続く。来季へ向けてスタートを切っている若鯉の成長を後押しするため奮闘した。

 「新設された部署。責任を感じながら取り組みました。1軍で活躍するためにはどうしたらいいのかを考えながらやってきました」

 指定選手の強化を目的につくられた2・5軍でチームを支える。ハイスピードカメラや球の軌道、回転数を計測できるラプソードなどのハイテク機器を使用。投球を数値化することで問題点を洗い出し改善を促してきた。

 島内と矢崎は2・5軍を経て1軍に昇格した。2人とも直球はチーム屈指の威力を誇るが、これまで1軍で打ち込まれる試合が多かった。分析の結果、直球と変化球のリリースに大きな差異があり変化球を制球できない点が浮き彫りになった。

 島内は直球を地面から高さ1・7メートル台で投じているのに対し、変化球は1・6メートル台だった。矢崎もデータ分析の結果「バラバラだった」ことが判明した。

 「例えば2ボールになった時に打者は何を待つか。変化球でストライクが取れないとわかれば真っ直ぐを待ちます」。どの球種でも投げる位置を一定にできれば、打者は狙い球を絞りにくくなる。

 数値が根拠になることで「自己満足にならない」というメリットも生まれた。「力を入れて投げた時と抜いて投げた時で、球速や回転数など球質に変化がなければ、力を抜いた方が長い回を投げられる。数値を知ることで力を抜く怖さがなくなるんです」

 矢崎は今秋、先発に再挑戦。「みやざきフェニックス・リーグ」でも好投を続け、首脳陣から評価を得た。長い回を投げながら、不利なカウントからでも変化球でストライクが取れるようになってきたのは、飯田スコアラーと一緒に取り組み、その助言を実戦してきたからだ。

 「1年間、映像を撮った。データもためられた。来年、これが1つの指標になる。1軍で活躍できるように、選手をサポートしていきたい」。伸び悩んでいた選手が成長する姿が何よりも大きな励みになっている。

  ◇  ◇

 ヤクルト戦の勝ち越しを後押ししたのが、岩本スコアラーだ。シーズン中はヤクルトに帯同し、データを収集。広島がヤクルトと対戦する時はベンチの最前列に座り、相手の傾向などを伝達した。ヤクルト戦でのチーム打率は5球団で最も良い・308。チーム防御率も4・06ながら2番目の数字を残した。

 「試合前にミーティングをして、選手がその通りにやってくれて結果が出たときはうれしかったです」

 相手の分析から導き出したデータを元に、投打で攻略の糸口を探す。短い時間での会話で気をつけたのは伝え方だ。コミュニケーションの本を読み込み勉強。端的で分かりやすい言葉を選んだ。

 課題は投手へのアドバイスだという。打者出身だけに相手投手を打ち崩すイメージは多くあった。一方で、投手に対して相手を抑えるための助言は「難しかった。簡潔にしないといけなかった」。

 スコアラーの役割は選手の背中を押すことだという。「迷いを消して、打席やマウンドに送り出すことが大事だと思います」。来季も的確なデータ分析でチームを支えていく。

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