【野球】NPB初の9500盗塁達成でも“伝統の足を使った攻撃”と言われないワケ

 オリックスは9月3日、ソフトバンク戦(京セラドーム大阪)で吉田正尚が二盗を決め、NPB初となる9500盗塁に達した。

 この試合に4-5で敗れたこともあり、大きな話題にはならなかった。そこに寂しさを覚える。テレビ中継などで広島の選手が盗塁やヒットエンドランを決めると解説者は決まって「カープ伝統の足を使った野球ですね」と言う。

 だが、オリックスに同様の表現が使われることはまずない。1065盗塁を記録し“世界の盗塁王”と呼ばれた福本豊のあとも、松永浩美、イチロー、谷佳知、糸井嘉男と盗塁王を輩出してきたのにである。

 今季もリーグ2位の54盗塁(13日現在)を決めているが、足攻のイメージはない。なぜなら得点がリーグ最低の261しかないからだ。走っても得点につながらなければ、相手にダメージはない。だから足を使ったイメージが残らないのだろう。

 西村徳文前監督は得点力の低さから足を使った攻撃を試みてはきた。俊足の走者が塁に出ると盗塁を試み一、三塁になればダブルスチールを仕掛けた。まるでそうすることが“義務”であるかのように走るので、相手も警戒する。39盗塁に対して失敗は22と成功率は低かった。

 ただ、中嶋聡監督代行が就任して変わった。ここまで15盗塁を成功させ失敗は2。2つはいずれも就任最初の試合となった8月21日・西武戦でのもので、これ以降失敗はない。

 中嶋監督代行は盗塁について「足というのは非常にいい武器ではあるけど、得点につながっているかどうか。効果的なスチールならいいと思う。ここは走った方がいいという(盗塁)なら全然いい」と話す。塁に出たからという“義務”ではなく、相手のスキを突いて走ることで成功率は高まり、攻撃にも良い流れを生む。これこそが目指すところだ。

 実は福本以降の盗塁王獲得者たちはFA、トレード、ポスティングなどでいずれもチームを去った。ここに問題があると見る。福良淳一GMは監督当時に「伝統が引き継がれていない。ここから再構築しないといけない」と危機感を募らせていた。

 中嶋監督代行は阪急にドラフト3位で入団。福本豊のプレーを間近に見てきた。オリックス時代の95、96年には連覇に貢献した。強いときを知るからこそ伝えられるものがあると思う。ここから伝統の再構築は始まる。

 オリックスがNPB初の1万盗塁を達成したときには“オリックス伝統の足を使った攻撃”のフレーズとともに、大きな注目を集めていることを期待したい。(デイリースポーツ・達野淳司)

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