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【スポーツ】大相撲で変わる指導 師弟=親子の関係は?部屋制度は?

 大相撲の立呼び出しの拓郎(63)=春日野=が暴力問題により、10月25日付けで退職した。日本相撲協会の臨時理事会では退職届を受理する前に2場所出場停止の懲戒処分が決議された。呼び出し最高位、力士で言えば横綱に相当する地位で振るった暴力だけに重い処分となった。

 先日は元十両貴ノ富士(22)が付け人への2度目の暴行行為を起こし現役を引退した。立て続けの不祥事は角界に波紋を呼んだ。

 協会のコンプライアンス委員会(委員長=青沼隆之・元名古屋高検検事長)が関係者を聞き取り、調査。協会は暴力事案を以下の通り発表した。

 拓郎は8日に新潟県糸魚川市で行われた秋巡業で客席に座り食事をしていた序二段格の呼び出しを「こんなところで食事をするな。お客さんが座るところだろ」と注意し拳で頭部を1度、殴った。さらに幕下格付け出しにも「お前、兄弟子なんだから、ちゃんと見てやらんかい」と指導するよう命じ、背中を1度、たたいた。両者にケガはなかった。

 指導の一環が一発退職。理事会内でも「気の毒だ」などの声が上がったという。

 あるベテラン関取も首をかしげた。「相撲界に来るのは言って聞くような子ばかりじゃない。そういう子でもきちんとできるように育てていかないといけない。『気を付けろよ』ってポンってやっただけでアウト。じゃあ、そういう子は放っておけばいいのか」。

 規定では番付上位ほど、暴力に対する処分も厳しくなる。若い衆がマナー、ルールを破った際と比べて、あまりにも重い。「態度の悪い下の者はいるとして、そういう子が訴え出れば上だけの責任になる」と、苦慮した。

 引退した貴ノ富士の事案では代理人弁護士を付け、師匠だった千賀ノ浦親方(元小結隆三杉)と音信不通となる事態が衝撃だった。相撲界では師匠と弟子は親子も同然。ある師匠は「もう親とか子とか、そういう時代じゃないんだろうな」と時代の流れを思った。

 「部屋制度そのものがもう持たなくなるんじゃないかな。協会全体で育てるとかいうこともあるのでは。俺は思う存分やらしてもらった。でも、今の若い力士が親方になって、あいつらはこれから大変だと思うよ」。厳しい叱咤(しった)が“パワハラ”、“モラハラ”とされてもおかしくない時代、今後は一層、言葉による指導力が問われていく。

 師匠を“おやじ”と呼び、おかみさんを母のように慕い、兄弟子を見習い、家族のような関係を築き人間的にも成長していくのが受け継いできた部屋制度。ほかのスポーツにはない相撲界の育成方法だ。暴力はダメなのは大前提。ただ、朝稽古で師匠に指導され、「ごっちゃんです」も言わずに笑っている若い弟子を見ると、良き伝統も失われていくのを感じる。(デイリースポーツ・荒木 司)

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