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【スポーツ】アイルランドサポーターとの思わぬ国際交流…電車内で原稿執筆中に遭遇

 愛野駅から浜松駅に向かう、JR東海道線に乗っていた。午後10時前後だったか。ガラガラだった先頭車両でパソコンを開いた。日本-アイルランド戦。その最終版用の原稿を書くためだった。

 ガラガラの車内で、パソコンをパチパチし始めたときだった。発車間際に、アイルランド代表の緑のジャージーを着た十数人と、日本代表の赤白のジャージーを着た数人、いずれも大柄な外国人が、歌いながら飛び乗ってきた。嫌な予感しかしなかった。

 全員、手にはビール。奇声を発したり、つり革にぶら下がったり…。すいていた車内は、たちまち夜更けの立ち飲み屋での3次会状態になった。

 奇異に映っただろう。3次会モードの電車内で一心不乱にパチパチする日本人。横に座った赤白の大男が、こっち見てるじゃん。凝視している。ついには首から下げた取材パスを発見された。

 「日本のメディアか。おめでとう。日本は強いな。オレはイングランドから来た。周りのアイルランド人の友達なんだ。オレは日本を応援したんだよ」

 そう自己紹介して言葉を続けた。

 「YOUは何のメディアなんだい?」

 締め切りとの戦いの中、始まった思わぬ国際交流。新聞であることを伝える。

 「スポーツかい?一般紙かい?」

 スポーツ専門紙だよ…との返答を告げ終わる前に、取材パスを奪われた。

 「スポーツ記者だってよ!」

 みんなでパスを回して首から提げながら、記念撮影会が始まった。なぜか2ショット写真も求められた。そうこうするうちに、正面に座った緑の巨漢にパソコンを奪われた。

 「日本が勝ったんだ。仕事なんかせずに、飲もうぜ」

 巨漢たちは、一行10文字、縦書きの日本語で書かれた記事が面白かったのか、なぜか大爆笑している。そして巨漢が身体を揺すって笑うから、片手で持ったビールがこぼれそうになった…。

 そもそもなんでこんな目に…。試合会場の作業場となるメディアセンターは試合終了後3時間までしか使えない決まりがある。試合終了後に敗戦チーム監督・主将会見。続いて勝利チームの監督・主将会見。その後にミックスゾーンを通る各選手の取材。そしてようやく原稿を書く…という流れになっているが、メディアセンター終了時間までに書き終わらなかった。

 融通を利かせてほしい-。時間延長のお願いは届かなかった。交通規制でタクシーも来ない。愛野駅まで走り、浜松行きのJRに飛び乗って、電車内を作業場に選んだのだった。

 本音を言えば仕事を完了して、一緒に飲みたい気分だった。敵味方なく、というラグビーの試合後の空気を楽しみたかった。ビールをこぼされる前にパソコンを奪還。相変わらず話しかける赤白の大男に相づちを打ちながら、粛々と日本大金星の原稿を書き進めた。

 赤白の大男は最後に言ってきた。「イングランドとジャパンが戦ったらどっちが強いと思う?」。胸を張って「ジャパン!」と言った。(デイリースポーツ・鈴木創太)

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