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【スポーツ】京大工学部卒ウオーカーが目指す「のるかそるか」の勝利

 デッドヒートを繰り広げる(左から)高橋英輝、山西利和、池田向希
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 今月17日に陸上の20キロ競歩日本選手権が今秋の世界選手権(ドーハ)選考会を兼ねて神戸市内で行われた。男子は高橋英輝(富士通)の5連覇という結果だったが、高橋自身が「次にレースをしたら順位は入れ替わる」と言うほど、男子はし烈な戦国時代。終盤まで高橋、池田向希(東洋大)とデッドヒートを繰り広げた3位の山西利和(23)=愛知製鋼=は、大学生の池田に敗れ「2位と3位は天と地ほどの差」と悔しさをにじませた。

 「ラストのスプリント勝負ができなかった。スパートの余力がなかった」。陸上競技の中でも、特に競歩は技術的な説明が難しい。報道陣にもわかりやすく伝えようと多くの選手がていねいに説明してくれるのだが、中でも「自動車のギアがずっとトップに入っていて加速しにくい。そのペースでは楽に進むのに、アクセルが踏み込めない感じ」と終盤の展開を振り返った山西の言葉は、非常にわかりやすく伝わった。

 昨年のジャカルタアジア大会で日本人最上位の銀メダリストは、京大工学部卒で社会人1年目。昨春に京大を卒業し、2020年東京五輪を目指して愛知製鋼に入社した。現在は週に数日、朝から午後までデータ処理などのデスクワークに入る。「(職場では)合宿などに配慮していただいている」と環境に感謝する日々だ。

 「自動車のギア」の話はいかにもゴリゴリの理系男子。しかし、「僕の中ではアジア大会の2位は負け。一発がかかる“のるかそるか”という試合で勝てたのは大学時代のインカレくらい」と言い、「勝負に対応できないのは、求められる水準に対してトレーニングも心の水準も足りていない」と精神的な話も多い。そして、実際に「感覚の方が大事」とも考えている。

 「物理も数字も抽象的に見立てて式を立てているだけ。まず現象があって、それをどう捉えるか。文系なのか数式なのか。理論は引きつけているだけなんです」。数学は宇宙だとかロマンだとか聞いたことがあるが、超文系の記者にはこれまで一度もピンとこなかった。しかし、山西の話はすべてがストンと心に落ちる。

 「京大卒」がつきまとい、インテリアスリートとして扱われることに本人は不本意かもしれない。それでも、彼が発信する言葉は、やはり明晰な頭脳あってのもの。それを競技に転換できる力があるのだろう。「のるかそるか」の戦いに勝つには「理想と感覚のすりあわせ」、そして「心の技術」が必要だと言う。2020年に向かって自らの肉体と頭脳を使って、言葉で競歩の面白さを発信できる。そんな役割も期待している。(デイリースポーツ・船曳陽子)

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