【スポーツ】大関高安、初Vへの決意「休んでいる暇はない」破壊力復活へ原点回帰

 九州各地を回る大相撲冬巡業では大関高安(28)=田子ノ浦=の気合が半端ではない。2日の初日、長崎巡業でいきなり栃煌山(春日野)相手に12番(6勝6敗)、3日の2日目、福岡・直方市巡業で正代(時津風)と15番(12勝3敗)。九州場所(11月25日千秋楽)の疲れを抜くどころか、連日トップギアで体を追い込んでいた。

 九州場所ではまたしても初優勝がスルリ。トップで並んでいた千秋楽、結びで関脇御嶽海(出羽海)に屈し12勝3敗。小結貴景勝(千賀ノ浦)に初優勝をさらわれた。悔しさを晴らすため、のんびり休んではいられない。

 「もう1回稽古して体力的にももう少し向上させていきたい。攻める感覚をもう一回、攻める相撲の流れを作りたい」。本来の攻撃的な相撲を必死に取り戻そうとしている。

 何が足りなかったのかを自問自答する。「まず、そもそもが15日間取る体を作れなかった」。腰痛のため九州場所前の秋巡業は途中合流。そこから体の状態を見ながら急ピッチで稽古し、九州場所に初日にこぎつけた。「何とか間に合わせたけどいい状態にはほど遠かった」と明かす。

 初日から立ち合いで押し込まれ、後手に回る相撲ばかり。何とか星は拾っていたが、攻められなかったのが実情だった。

 そして千秋楽に敗れたことも必然だった。「優勝争いで気持ちは乗っていたけど負けてよく考えてみれば(負けは)当たり前。この体の状態で勝てるわけがない。奇跡的に勝った相撲もありそれで勘違いした。まだ優勝できる体じゃない」。

 今年は夏場所の全休があったものの出場5場所で3度、12勝3敗を挙げて優勝次点だった。春場所の横綱鶴竜(井筒)、名古屋場所の関脇御嶽海(出羽海)、九州場所の貴景勝と優勝力士に土を付け、大関としての責任も果たしている。

 一方で栃ノ心(春日野)、御嶽海、貴景勝と優勝力士が今年は3人も誕生。昨年夏場所後に大関に昇進し初優勝、そして一気に横綱と目された高安がまだ賜杯を抱いていないとは本人が一番、腹立たしい思いだろう。

 「まだその程度ということ。何か優勝に届かないところがある。下位に取りこぼしがある。弱点を突かれて隙がある。下の者は必死。弱いところを攻めてくる。研究されてそれに対応できない自分がいる。それで取り乱したりとか。そこら辺が欠けている部分」。

 尻に火が付き、来年こそ雪辱に燃える。そのためにも関脇から大関昇進の頃、どんな相手もなぎ倒したパワー相撲へと原点回帰する。「調子がいい時はどんどん自分から出て攻めている。その時以上のものを作りたい」。立ち合い、右のかちあげから体ごと当たって相手を吹っ飛ばした、あの破壊力を復活させるつもりだ。

 大関昇進後、本来の左四つに磨きをかけて、さらに右四つに組む取り口も稽古し進化を目指した。稽古で受ける相撲も目立ったのも、本場所を想定し、あえて自身を不利な体勢にして試していた。

 この試行錯誤がズレを生んでいた。「ここ数場所は本来の相撲じゃないような気がしていた。受けても取れるけど全部を受けて勝つのは難しい」。相手の力を受け止めるのが大関、横綱の相撲という考えはあるものの「攻めを得意とし、攻めの強い横綱はいっぱいいる」と力を込めた。

 やるべきことは分かっている。「後手に回らないように、稽古場でしっかり取り組みたい。稽古場でできないと本場所でできない。千秋楽にへばらないようにしっかり体作りをしたい。調整とかしている場合じゃない。休んでいる暇はない」。準優勝はもういらない。(デイリースポーツ・荒木 司)

関連ニュース

編集者のオススメ記事

オピニオンD最新ニュース

もっとみる

    ランキング

    主要ニュース

    リアルタイムランキング

    写真

    話題の写真ランキング

    注目トピックス