【スポーツ】古舘アナが生きた教材、名物プロレスアナ・清野氏「ラジカセで録音」

 日本最大手の新日本プロレス、世界最大手のWWE、世界最高峰の総合格闘技UFCと、史上初めてプロレス格闘技メジャー3団体の実況を達成したフリーの清野茂樹アナウンサー。お手本にしていたのは80年代に新日本プロレスの実況を務めていた当時の古舘伊知郎アナだった。清野アナが今でもそらんじることができる、古舘アナの名文句とは。清野アナのインタビューその3(全3回)。

 -そういえば古舘伊知郎さんがお好きだそうですが。

 「本当にお手本です。世代的に、子どもの時に最初に見たのが古館さんだったので大きいですね。最初に一番スゴイ人が来ました。当時、ウチはビデオがなかったのでラジカセで録音していたんですよ。それを繰り返し聞いて古館さんの言い回しとか暗記していましたね」

 -今でも覚えているものはありますか。

 「いっぱいありますけど、忘れられないのは小学校4年の時に見たアントニオ猪木とハルク・ホーガンの試合で、かの有名な舌出し失神事件。ホーガンのアックスボンバーを食らって猪木が動けなくなったときに、『乾ききった時代に送る、まるで雨乞いの儀式のように、猪木に対する悲しげなファンの声援が飛んでいる。しかしながら猪木は動かない。猪木は石のように動かない』というフレーズ。『乾ききった時代に送る』って何なんだって(笑)」

 -プロレス実況をしたいと思ったのはその頃から。

 「そうですね。だから、プロレスラーになりたいと思ったことは一度もない。こんなのは絶対無理だと思って」

 -プロレスは好きだけど、リングに上がるのは違う。

 「違う。あれは絶対無理だと、すぐ子どもの時に思いましたね。こんなのは絶対まねできない。でも、こっち(実況)はマネできると思った。それを追いかけ続けて今まで来たって感じで、古館さんがいなかったら実況は志していなかったと思いますね。当時はプロレスごっこが盛んだったんですけど、プロレスごっこでも実況をやって、そっちで盛り上げていた。そこで古館さんのフレーズを使ったり。『乾ききった時代に…』と言うわけですよ(笑)。ああいう大げさな表現というのを聞いていましたので、やっぱり煽りじゃないですか。盛る作業ですよ。例えば国語の時間に作文を書きなさいと言われたら、『紅組と白組がいよいよ最終決戦を迎えることになった。その決着は、この騎馬戦で迎えるわけであります』みたいに大げさに書くんですよ。盛ってしまうのは古館さんの影響。でも、それは普通だと思っていたんですよ。あの時代は金曜8時とかでみんな見ていた。みんな古館さんの実況を聞いているから、マネをするのは当然だと思っていた。ところが、大人になったら意外とそんな人はいなかった(笑)」

 -やっぱりプロレスは特殊だった。

 「特殊だったんですね。当然だと思っていたのに」

 -そして、プロレス実況の本を書くまでになった。

 「そんなボクのプロレス実況という、これはかなり狭いですよ。実況じゃなくてプロレス実況。プロレス実況だけでメシ食えんの?と思っている人は多いと思う。それが食えるんですよ。自分が選んだ、ある意味、導かれたかもしれない仕事について正面から向かった本。プロレスラーの本は山ほど出てますけど、プロレスのアナウンサーが書くのはそんなにない。プロレスの中継はみなさん当たり前のように聞いているかもしれないですけど、実はこういう人間がやってんだよ、と言うのが伝わればいいですね」

(構成 デイリースポーツ・洪 経人)

 ◆清野茂樹(きよの・しげき) 1973年8月6日、兵庫県神戸市出身。フリーアナウンサー。青学大卒業後の96年に広島エフエム放送入社。05年に退社してフリーとなり、新日本プロレス、WWE、UFCの3大メジャー団体の実況を史上初めて達成した。ラジオ番組「真夜中のハーリー&レイス」(ラジオ日本)のパーソナリティーを務め、「もえプロ♡女子のための“萌える”プロレスガイドブック」(PARCO出版)、「1000のプロレスレコードを持つ男」(立東舎)などの著書もある。

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