【野球】ヤクルト、王者広島のメソッド注入…石井&河田コーチが進める攻撃改革

青木(左)にトスを上げるヤクルト・石井琢朗打撃コーチ
2枚

 ヤクルトの1軍・浦添キャンプは活況だった。球団ワーストの96敗で最下位に沈んだ昨季からの浮上を期し、小川淳司監督が4年ぶりに復帰。宮本慎也ヘッドコーチも就任し、初日から10時間超のメニューをこなすなど、猛練習が行われた。

 キャンプから“攻撃改革”が始まっている。中心は、広島から移籍した石井琢朗打撃コーチと河田雄祐外野守備走塁コーチだ。16年からそれぞれ打撃、走塁部門の指導を任された広島では連覇に貢献。機動力を絡めてチームの得点力を大きく伸ばした。得点は15年の504から、16年に684、17年は736に。盗塁数は15年の80から、16年は118、17年は112。ここ2年は、いずれもリーグトップの数字を残した。

 石井コーチはアイデアマン。引き出しの豊富さに驚く。早出や居残りのスイング強化の素振りで使用するのは「水の中で振っている感覚」というトレーニング用の1・5メートル長尺バット。芯がほぼない棒のようなバットで行うティー打撃は、ミート力の向上が目的だ。

 特に目を引いたのは、片手で握って振ると重りが動いて「カチッ」と音が鳴る長さ約50センチの器具。実は娘さんのテニスの試合を観戦した際に目に留まったのだという。「肘の使い方を覚える。インパクトの時に音が鳴るからいい」とスポーツ用品店に出向いて、1万2000円の品を自腹で2本購入。「娘には買っていないんだけど」と苦笑していた。

 グラウンドの打撃練習は20分×6種類のメニューを2時間ぶっ通しで実施。ソフトボールを打つティー打撃など趣向を凝らす。「なるべく遊びの時間をなくす。全員に目が届くので、気付けばどこでもアドバイスができる」という狙いがある。

 機動力アップを任されたのが河田コーチだ。キャンプでは、試合日を除いて最終クールまでほぼ毎日、野手にはベースランニングの時間が設けられた。古巣・広島のスコアラーも「ウチでもここまではやらない」と話す徹底ぶりだった。

 キャンプイン当初の指導は基本から。一塁の駆け抜けやベースを回る際の走路、体を倒すなどの姿勢、第1リードの重要性なども細かく説明した。広島と比べると個々では劣る走力の現状を認識。「無駄なコースを走っていては点を取れない。量は少なくても、毎日やっておいた方がいい」と反復を重視した。

 また、足が速くはない中村らの主力に、走塁意識を高く持つことを強く求めた。「速くない選手が頑張って(走塁が)うまくいくと、相手のショックもデカい」と説明する。そして何より、チーム全体に次の塁を狙う意識が浸透する。「いつも試合に出る選手がやれよ、と。もう3回ぐらいは言っているかな」と明かした。

 打撃と走塁がかみ合ってこそ、得点力は増す。練習試合やオープン戦では、意識の変化が見える場面があった。石井コーチが目指すのは「いつも打てるわけではない。数字にならない打撃で得点できるように」という“適材適所の打撃”。巨人・菅野相手に下位打線が粘り、四球と敵失、内野ゴロで得点。2回で54球も投げさせた。走塁では、捕手がワンバウンド投球を前にこぼした瞬間、二走・中村が判断よく三塁へ。河田コーチは「フォークが来るカウントだと思って準備していたと言っていた」とうなずいた。

 再起を図るヤクルトで進む“攻撃改革”。キャンプ序盤、テレビ番組のロケで訪れたカープファンのお笑い芸人、アンガールズ・田中から「裏切り者~」と冗談で声をかけられた石井コーチは「カープはもちろん好きですよ」と応じつつ「ベイスターズでもヤクルトでも、野球人として野球を愛するのは一緒ですから」とサラリと答えていた。広島を連覇に導いた職人コンビのメソッドが注入される今季。ヤクルトの戦いぶりが大きな変ぼうを遂げるのは間違いない。(デイリースポーツ・藤田昌央)

関連ニュース

編集者のオススメ記事

オピニオンD最新ニュース

もっとみる

    ランキング

    主要ニュース

    リアルタイムランキング

    写真

    話題の写真ランキング

    注目トピックス