【芸能】藤井四段取材の難しさ…過熱取材の現場で将棋連盟も苦慮

 昨年、中学3年生の最年少棋士・藤井聡太四段(15)が歴代最多連勝記録を更新し、将棋界に大きな注目が集まった。“藤井フィーバー”は社会現象にまでなったが、その裏では過熱した報道で、日本将棋連盟が取材対応に苦慮する場面もあった。

 藤井四段は昨年6月末、デビュー以降無敗で歴代最多連勝記録となる29連勝を達成した。公式グッズも多数発売され、「新語・流行語大賞」には「藤井フィーバー」がノミネートされた。

 藤井四段の快進撃は社会現象となり、多くのマスコミが取材に訪れたが、観戦記者でもなければ将棋の知識にも乏しい記者も多く、専門性が高い分野だけに取材には課題も多かった。

 対局後には両対局者が「感想戦」として勝負を振り返るが、その前に短い取材時間がある。対局は長いものになると夜中までかかるため、対局者への負担も考慮し、感想戦での質問は一般的に対局を振り返る質問が中心だ。

 実質的に一般マスコミが藤井四段の生の声を聞ける機会は感想戦前の取材のみとなっている。藤井四段はまだ中学生ということもあり、原則として個別取材には応じていないため、報道陣もここぞとばかりに質問する。その結果、両対局者がそろう場で藤井四段に質問が集中することも多く、将棋と無関係の質問も少なくない。

 将棋連盟の関係者も「将棋がこんなに報道されることはこれまでなかった」とブームを喜びつつも、「“藤井フィーバー”と絡めたユーモアを効かせた質問はありがたいが、あまりに関係のない質問に藤井四段が困っている時がある。どうすればいいのか」と頭を悩ませている。

 私自身、藤井四段のグッズが発売された際にグッズの感想を質問し、ネット上で酷評されたこともある。一部メディアが、自分たちの考えている番組などの企画に合うコメントを引き出そうと質問することもある。

 藤井四段はどんな質問にも丁寧に応じてくれるが、「食事・願掛け・座右の銘」など何度も繰り返された質問にはうんざりした様子を見せることもあった。あまりに逸脱した質問者には将棋連盟が個別に注意を行っているというが、専門知識が乏しいとどうしても将棋の内容よりも藤井四段個人に着目した質問になってしまう現実もある。連盟関係者も「許容する質問の線引きは難しい」という。

 昨年を「連勝によって多くの人に注目していただけたことは得難い経験ができた」と振り返った藤井四段。既に五段昇段を射程圏内に捉え、史上最年少での棋戦優勝の可能性も残されている。4月から高校に進学する藤井四段にとって中学生活最後の対局でも、学生生活と絡めた質問は上がるだろう。酷評される質問ではなく、いかに機転を利かせた質問で、藤井四段の言葉を引き出せるか。記者としても試されている。(デイリースポーツ・石井剣太郎)

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