【野球】CS出場の阪神・俊介、バットで変える、歓喜の秋へ

 オレンジと黄色に染め分けられた9月30日の東京ドーム。この日、最も輝きを放ったのは阪神・俊介外野手(30)だった。右翼席への一発を含む3安打2打点の大活躍で、チームのシーズン2位が確定。その時、巨人の捕手・小林は歓喜に揺れる左翼スタンドをじっと見つめていた…。

 ネット裏にいた記者の脳裏には8年前の記憶がよみがえっていた。広島・広陵の先輩、後輩の2人は、大学時代に忘れられない一戦を経験している。09年10月11日、場所はわかさスタジアム京都。当時、近大4年の俊介と同志社大2年の小林。関西学生リーグ第7節、今後の優勝戦線を占う大事な試合だった。

 下馬評は圧倒的に近大有利。エース中後(今季はダイヤモンドバックス傘下のマイナーでプレー)を擁し、荒木(現ヤクルト)が主将としてチームをけん引。そして、打線の軸には大学通算打率・330、7本塁打、45打点を誇る俊介がいた。

 だが、試合は5-3で同大が勝利。捕手・小林はマウンド上の投手の元へ駆け寄り、喜びを爆発させた。阪神、西武など4球団9人のスカウトが視察した一戦で、俊介の大学野球生活が幕を閉じた。「打ちたい気持ちが強過ぎて空回りした」。かわいい後輩に抑え込まれた。涙を流し、青春の終わりを感じた。

 数分後、球場の外周に俊介の姿があった。涙で目を腫らしながら小林に激励の言葉をかけ、バットなど自身の道具を譲った。本人は「あんまり覚えてないなぁ」と笑うが、小林は「いろんな物をいただいた。ありがたかったですね」とはっきり記憶している。その光景は実にほほえましく、現場にいた記者は勝手にプロの世界での再戦を夢に描いていた。

 今季、俊介の対巨人戦の成績は39打数16安打で打率・410。セ5球団の中でもダントツトップのアベレージを残し、特に東京ドームの打率は・500と圧倒的な数字を誇る。極めつけが、9月30日の大活躍だ。ネット裏から見る光景は、まるで8年前の逆転現象。あらためて、小林が先輩のすごさを語った。

 「もともと、ものすごく能力が高い選手。こっちも抑えるための戦略を練っているんですけどね…。僕は、本当に尊敬しています」

 かつて小林の前に屈した男は、8年の時を経て“Gキラー”に大変身した。両手に残る手応えを頼りに、向かうは下克上への道。14日・DeNA戦(甲子園)から始まるCSファーストSでは、猛虎打線のキーマンに挙げられている。

 「今は自分のことに集中する。チームの勝利に貢献する、それだけ」-。あの時の涙は強さに変わった。今年の秋は、歓喜に彩られた秋にする。(デイリースポーツ・中野雄太)

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