【野球】『オリ版226事件』から生還した男・大山 プロ4年目での初勝利
オリックス・大山暁史投手(28)が5日の日本ハム戦でプロ4年目での初勝利を挙げた。昨年5月24日、6-22で敗れたソフトバンク戦(通称『オリ版226事件』)で大乱調、一時はクビも覚悟した左腕がどうやって再起したのか。地獄からはい上がってきた男の苦闘の1年に迫った。
4年目でのプロ初勝利にも大山は「本当に実感とかないんです。それよりも連敗してたんでチームが勝ったことがうれしかったです」と笑顔で話した。
「去年の今ごろは本当に地獄でしたから」
言葉に実感がこもった。オリ版226事件と呼ばれる昨年5月24日・ソフトバンク戦で6-22で敗れた惨劇。この渦中に左腕はいた。四回から登板し、失策などもあり2/3回で1安打5四球7失点(自責は1)。連続を含む3つの押し出し四球はまさに悲惨だった。
「これで終わったなと思いました。帰りの新幹線の中で今年でクビだろうなあと思ったのを覚えています」
翌日から2軍に合流したが、当然、やる気など起こるはずもない。課されたメニューを淡々とこなす日々。そんなとき、田口2軍監督から呼ばれた。
「上から投げてみないか」
プロ1年目のオフに左打者対策にと横手投げにフォームを改造していた。
「ずっと横から投げてたんでできるかなと思いましたけど、投げたら意外といけるなと思いました」
秋季練習では小林投手コーチが付きっきりでフォームをチェックしてくれた。気がつけば140キロ前後だった球速は140キロ台後半を計測するまでに。手応えを感じるとともに覚悟していた戦力外になることもなかった。
1軍昇格のチャンスが訪れたのは5月だった。しかも11日の今季初登板はあの日と同じヤフオクドームのソフトバンク戦。1死満塁のピンチだった。
「ああこんな景色だったなと思い出しました。意識はなかったです。“結果を求めるな”とだけ言い聞かせて打者に向かって行くことだけを考えました」
捕逸で1点は失ったが上林、高谷を連続で空振り三振に斬った。
226事件の教訓だった。結果を求めるあまり力み、本来の投球ができなかった。自分のボールを信じて打者に向かうことだけに集中するようになった。
そこから1軍に定着。福良監督からは「ずっといい投球している。左に対しては安心して出しています」と信頼を寄せられるまでになった。
大山は「1年前には考えられなかった。頑張っていればいいことがあるっていうことでしょうか」と話す。
失敗を糧に226事件から見事に生還した。(デイリースポーツ・達野淳司)