【スポーツ】極真戦士の挑戦 2つの“空手”に戸惑いながら

 まるで転校生のようだった。20年東京五輪の新種目となった空手のナショナルチームが、本年度第1回の強化合宿を行い、全日本空手道連盟(全空連)とは、別団体の国際空手道連盟極真会館から組手男子84キロ超級の上田幹雄(21)が単身参加した。最初のミーティング開始前にただ一人、前に立ってあいさつ。空手界にとって、歴史的な挑戦が始まった。

 寸止めルールの全空連と、故大山倍達氏が創設したフルコンタクトの極真空手の国際空手道連盟極真会館は長らく絶縁状態だったが、空手の五輪種目入りを目指していた15年4月に友好団体として協力する覚書を交わした。全空連が極真の主要団体と手を組むのは64年の創設以来初めてのことで、“歴史的和解”と呼ばれた。

 上田は五輪を目指し、4月の強化選手選考会に参加。極真では若手のホープとして期待される存在だが、一撃必殺を理念とする極真とは違う、寸止めでポイント制の五輪の空手の距離感や技の出し方に苦しみ、1ポイントも奪えなかったが、84キロ超級は層が薄いこともあり、全空連は3年後の五輪を見据え本年度は育成選手として、強化合宿に参加させることを決定。ともに参加予定だった高橋佑汰(24)がけがのため、不参加。極真から1人だけの参加となり「心細かった」と苦笑いを浮かべたが、全空連の選手とも交流しながら練習をこなした。

 試合形式の練習では、選考会と同じく間合いや、寸止めの攻撃に戸惑う場面が目立った。「全然スピードが違った。どうしても力みが出てしまうし、完ぺきに当てて良い競技と、当てちゃいけない競技。打ち抜くのと、打って引く。何もかもが違う」と頭をかいた。

 さらにこの日は競技面以外での違いも痛感した。ミーティングでは、専門スタッフによる食事面などの指導も行われ、「『暴飲暴食するな』と。極真はとにかく『食え!』なので。“極真盛り”という言葉もあるぐらい。今も6合食べてる」と、“カルチャーショック”を受けた様子だった。

 ただ、東京五輪までは極真と五輪空手の“二刀流”でいく意志を固めており「それができたら成長できる」と、力を込めた。今後も月1回の強化合宿に参加。週に3回五輪空手の練習を組み込むという。同時に極真の大会に向けて海外大会への出場も検討中だ。「まずは(五輪の空手で)1ポイント取ることからですね」。3年後、空手が最も注目を集める舞台を夢見て、極真戦士の挑戦は続く。(デイリースポーツ・大上謙吾)

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