【野球】四球合戦に精密機械が嘆く「球数投げなくしてコントロールはつかない」

 開幕シリーズでとんでもない記録が出た。1日の広島-阪神戦(マツダスタジアム)で延長10回両軍28四死球(広島15四死球、阪神13四球)、九回までの両チーム合わせて26個の四球は、80年ぶりの日本記録に並んでしまった。

 この記録に阪神OBで日本歴代3位の通算320勝を挙げた小山正明氏(デイリースポーツ評論家)は、「テレビの解説で辛口と言われているけど、黙っていられない」と苦言を呈した。

 四球合戦となった一戦に「いまさら言うまでもなく、キャンプで投げ込みが少ないから。100球投げたら投げ込みと言われる。古い時代と言われるかもしれないが、これだけは言っておく、球数投げずしてコントロールがつくはずがない」と、投げ込み不足が80年ぶりの記録を生んだと分析する。

 球審の判定が辛かったという声もある。しかし「制球力があれば対処のしようがある」と突き放した。続けて「打線は水ものとはよく言ったもの。10回のうち3安打すれば一流打者。ただ、四球は100パーセントセーフになる」と四球連発に、口調は厳しくなる一方だ。

 「プロとして恥ずかしいと思わないといけない。まして押し出しの四球など論外。阪神OBとして情けない。プロなんだからもう一度、調整方法を考えないといけない。まだ残り試合は多い。先発投手は中6日あるんだから、その間に投げ込みをするとか各自がプロとはどうあるべきか、練習の取り組み方を考えてもらわないとえらいことになる」

 先発、中継ぎ、抑えの分業制が主流となり、肩は消耗品という考えがプロ野球界はもちろん、アマ野球でも浸透してきた。アマチュアでの連投も非難される時代。しかし、その弊害が出た80年ぶりの“怪記録”になったと言ってもいいかもしれない。

 この一戦を広島のラジオ局で解説を務めた安仁屋宗八氏も投げ込みの必要性を説く一人。広島の15四死球に苦々しい思いでいたに違いない。昨年、今年とキャンプで臨時コーチを務めたが、現役選手になかなか投げ込みをする投手が出てこなかった。そんな中で四球合戦の翌日の2日に6回4四死球を出しながら勝利投手になった九里は、キャンプ中から比較的投げ込みを行い、安仁屋氏がキャンプでのMVPに選んだ。昔のように200球、300球はなかなか投げることはできないだろうが、制球力アップには投げ込みが必要だろう。

 小山氏は無四球完投73試合で日本歴代2位。78試合の歴代1位、317勝の鈴木啓示氏は「世界記録の被本塁打(560本)と引き替えに1位になった。本当にコントロールが良かったのは小山さん」と称賛するほどで、現役時代は精密機械と言われ、ボール半分の出し入れで打者と対峙、白星を積み重ねた。

 「なんかぼやき漫才みたいになってしまったが、80年ぶりの記録だから…。口酸っぱく言うが、球数投げなくしてコントロールはつかない」-。

 小山氏の言葉を現役選手はどう受け止めるか。古いと思うのかそれとも…。投げ込みの必要性が問われる、80年ぶりの記録だった。(デイリースポーツ・岩本 隆)

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