【野球】54年ぶり甲子園勝利の呉 聖地での経験と自信を糧に夏へ…

 第89回選抜高校野球大会が19日から甲子園で開催され、激戦が繰り広げられている。創部10年目で初出場の呉は開幕戦で至学館(愛知)を破り、1963年春に8強入りした呉港以来、54年ぶりの勝利を地元に届けた。

 呉市は元々、初代ミスタータイガースの藤村富美男氏や巨人でプレーした広岡達朗氏らを輩出するなど野球が盛んな地。戦前には前身の大正中を含め呉港中が6年連続で夏の甲子園に出場し全国制覇も成し遂げた。だが、1963年の選抜に呉港が出て以来、呉市から甲子園から遠ざかった。

 「呉市から甲子園に-」。市民の思いは年々強まっていった。2007年に市立の呉に野球部を創立。尾道商(広島)を3度選抜に導いた中村信彦監督(62)にその願いを託した。

 中村監督は「甲子園に出場するのは簡単ではない。まずは、県ベスト8を目標にチーム作りを始めた」と就任当初を振り返った。創部当初は部員17人。専用球場はなく、市営球場を借りて練習に励んだ。土、日は同球場が一般開放のため、練習できない日もあった。現在は、市の協力もあり、以前よりは長く練習に打ち込めるようになった。

 地元の生徒が集まる公立高校。決して上手い選手ばかりが集まってくるわけではない。「勝ち上がっていくにはこれしかない」。中村監督が目指したのは守りを中心としたチーム。守備練習では、失敗したことを反復して体に成功例を覚え込ます。打撃練習は長打を狙うのではなく、徹底して低い打球を打つ意識。10年間ブレることなく指導し続けた。

 その結果、チームは着実に成長。12年には春の県大会で4強入り、15年には夏の広島大会で決勝に進出した。そして、昨秋の中国大会で準優勝し、聖地への切符をつかんだ。

 開会式直後の初戦、延長十二回の末に至学館(愛知)を破り聖地初勝利。二回戦では、昨秋の明治神宮大会覇者・履正社(大阪)と対戦し、0-1で敗れはしたものの大健闘。「いい経験になったのではないか。守りは100点。自信にしてもらいたい」と選手たちを称えた。

 夏に向けて勝負はもう始まっている。聖地で得た経験を糧に“呉野球”はさらなるレベルアップを目指す。(デイリースポーツ・井上慎也)

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