【芸能】「シン・ゴジラ」樋口監督による“庵野監督との付き合い方”とは

 映画「シン・ゴジラ」が3日に行われた「日本アカデミー賞」授賞式で最優秀作品優賞、最優秀監督賞など7冠に輝いた。「日本アカデミー賞」以外でも「ブルーリボン賞」作品賞、「毎日映画コンクール」の日本映画大賞を獲得。平成28年度芸術選奨の文部科学大臣賞には庵野秀明総監督(56)が選ばれるなど、「君の名は。」とともに2016年の映画界を席巻した形となった。

 しかし、それぞれの授賞式に庵野監督が出席することはなかった。ほとんどの授賞式に代理で出席し、「庵野は仕事の都合で…」と壇上で説明したのが樋口真嗣監督(51)だった。「シン・ゴジラ」を両輪で支えた樋口監督に、庵野監督との付き合い方を聞いた。

 樋口監督が明かしたコツとはズバリ「相手の意見をつぶさない」こと。「相手の意見を否定しない代わりに、自分の意見も否定させないということです。人はなんでモメるかっていうと、自分の意見を否定された途端に『なにっ?!』ってなるからなんですよ」と説明した。どちらかのやりたいことに対して「それよりこっちの方がいい」ではなく「それもやりつつこれもやる」ようにしたという。「結果、やることがものすごく増えたんですが…」と苦笑いだったが、思わず「なるほど」とうならされた。庵野監督に限らず、あらゆる人付き合いに応用が利くように思えた。

 2人は、2012年に東京都現代美術館で開催された「館長庵野秀明 特撮博物館展」で上映された短編「巨神兵東京に現わる」でも企画(庵野)と監督(樋口)として共同作業を行った間柄。こだわりが強いことで知られる庵野監督をよく知る樋口監督だからこそ語ることができる秘けつだった。

 「シン・ゴジラ」における庵野監督のこだわりは、さまざまな場面で発揮された。膨大なせりふが書き込まれた分厚い台本を見た関係者が、長時間の作品になることを懸念すると、わざわざ声優を集めて早口で声の演技をさせ、録音したものを聞かせて周囲を説き伏せた。結果、俳優たちはせりふを覚えるだけでなく、話すのにも苦労したが、上映時間はきっちり2時間に収めた。また撮影時には、音声マイクの位置をかえようとした庵野監督に、スタッフが「音がとれないので、別のカットでお願いできませんか」と言うと、「じゃあこのカットなし」となり、周囲が大慌てしたこともあったという。

 一緒に仕事をするのは大変そうだが、強いこだわりがあるクリエイターだからこそ個性の際立つ作品を作ることもできるというものだろう。「シン・ゴジラ」が日本の映画史に残る作品になったのは、庵野監督のこだわりと、それをうまく受け止めて形にした樋口監督をはじめとするスタッフの存在があってのことだと実感した。(デイリースポーツ・澤田英延)

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