一人暮らしも８年目、ぼっち行動はお手の物。回転寿司にラーメン、牛丼チェーン、カラオケや旅行など、一人でも気にせず出かけるが、どうしても踏み入れられない“聖域”があった。それが一人焼き肉だ。焼き肉とは、みんなでワイワイお喋りしながら楽しむもの。お腹がはちきれそうになるまで食べて、肉の匂いを身にまとい「私たち焼き肉臭いね」なんて言いながら電車で家路につく。１カ月にあるかないかの食の大イベントである。それを一人でだなんて…。いや、ただあの空間に女子一人で入る羞恥心と抵抗がある。でも、ランチだったら行けるかも？肉食フードライター新境地開拓に挑戦！

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　まずはお店探しから。インターネットで「関西　一人焼き肉　女子」と検索。大阪・難波のお店が数多くヒットする。ダメだ、遠すぎる。これは当日になって急に緊張して「やっぱりやーめた」なんてことになりかねない。作戦を変更し、自宅から近い神戸～尼崎間で再検索。「阪神香櫨園駅から徒歩１分」の文字に吸い寄せられ、「まめ牛」の食べログページへ。「お一人様、黒毛和牛、ランチ食べ放題」に魅力を感じ早速取材交渉をすると、あっさりＯＫとの返事。舞台は整った。

　とある土曜日のお昼。いざ、「まめ牛」で初の一人焼き肉。開店は11時。10分前に到着し、「少々お待ちください」と店長の茶谷さんを焦らせてしまう滑り出しの悪さ。恥ずかしいといいながらも、なんだ、私張り切ってるやん。いよいよオープンと同時に案内されたのは、８席ほどあるカウンター席だった。お一人様にやさしいポイントを早速発見。

土日祝限定のランチは牛、豚、鶏の食べ放題かそれらの定食から選べる。お目当ての牛肉１時間食べ放題1200円を注文した。１皿150ｇの牛肉、おかわり自由のどんぶりご飯と味噌汁、サラダが運ばれてくる。ジョッキの水で一人寂しくカンパ～イ。

　店内のテーブル席はすでに家族連れや友達同士の来店でにぎわいを見せていた。そんな中、カウンターで一人ガツガツと牛肉をほおばる。話し相手がいないせいか、厚めにカットされた牛肉も一気に胃の中へ。さあ、追加注文しよう！と思ったが、恥ずかしさのあまり「すみません」の声が出ない。忙しく働く茶谷さんに視線を送るとすぐさま気付いてくれ、何とか追加の肉にありつけた。

　「鶏肉おすすめなんですよ～」と２皿目に、もも、ロース、カルビの鶏肉3種盛りを特別に頂いた。家族４人で来ても鶏肉ランチしか注文しないというお客さんがいるほど、人気だという。牛肉の後だったため、さっぱり＆ペロリとたいらげ、さあ今度こそ！出ました「すみませ～ん！！」。３皿目に入るときにはご飯も水も追加注文。いつの間にか一人で食べる恥ずかしさよりも、食い意地の方が上回っていた。１時間でどれだけ食べられるのか尋ねると「男性で７皿注文された方がいます」とのこと。

　私はというと、時間ギリギリで４皿目を注文しタイムアップ。しかしここから茶谷さんとの野球トークはヒートアップ。「スポーツは何でも見る。野球、特にオリックスと阪神ファンです」とのことで忙しいのにも関わらず、会話に付き合ってくれた。

　止まらないお箸に、止まらないお喋り。気づけば時計の針は13時をさしていた。夜のメニューもランチで注文できるというので、おすすめのねぎめしを“デザート”に頂いた。白米にそぼろ、かつおぶし、たっぷりのねぎと卵黄、きざみ海苔が載っていて混ぜて食べる。気をよくした茶谷さんが、これまた特別にお手製の「山いもキムチ」を提供してくれた。

　閉店の14時。３時間滞在で、しめて牛肉３皿、鶏肉１皿、ご飯２杯、ねぎめし、味噌汁、サラダ、キムチ、ジョッキ水３杯。これだけ食べて喋っていたせいか、周りの視線は全く気にならなかった。思っていたほど周りはお一人様を気にしていないのか、ただ自分が気付かなかっただけなのか。一人焼き肉には鈍感力が必要なのかもしれない。

　それにしても健康診断前だというのにさすがに食べ過ぎた。運動のため帰りはお店から家まで１時間かけて歩いて帰宅。いや、違う。本当は昼間から焼き肉の匂いをつけて電車に乗るのが恥ずかしかったからだ。(デイリースポーツ・疋田有佳里）