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世界で対等に戦う…厩舎システム変革も

昨年のヴィクトリアマイルも角居厩舎は3頭出しで臨んだ。(右から)ラキシス、デニムアンドルビー、キャトルフィーユ=2014年5月、栗東トレセン(撮影・石湯恒介)
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 オフシーズンになると、野球やサッカーなど選手の移籍が紙面をにぎわせる。特にJリーグは頻繁。毎日のようにホームページで移籍情報が更新される。最近なら、Jリーグの広島=浦和が話題になった。広島で指揮していたペトロビッチ監督が12年に浦和の指揮官に就くと、移籍が急加速。槙野、森脇に続き昨年は西川、今季は石原と、広島の主力が浦和に移籍した。高く評価される、レギュラーが保証されるなど、いい条件を求めるのはプロである以上、当然の権利だ。

 競馬も、野球やサッカーと同じでチームの争いという側面を持つ。厩舎で勝ち負けを競い、その結果が収入として表れる。馬主も成績のいい厩舎に馬を預けたい。従って、結果を残す厩舎には良血馬が集まる。ただ、いくら高額馬でも、未勝利のまま終わるケースもある。そこで鍵を握るのが“厩舎力”だ。

 この“厩舎力”とは何か?助手、厩務員の腕によるところが大きい。トレセンでも“腕利き”と言われる人は少なくない。たとえばブエナビスタやハープスターで有名な山口厩務員。「彼が担当すると、どんなにうるさい馬でも落ち着きが出る」。トレセン関係者が“神の手”とうわさするほどだ。

 名調教師のもとに、腕のいい助手や厩務員を集めてドリーム厩舎をつくれないだろうか?これはJRAの規則上、実現しない。いや、実現しなくなったというのが正しいか。かつては厩舎間でスタッフのトレード、移籍が行われていた時代もあったが、現在はスタッフの補強ができない。阪神が巨人を倒そうとし、浦和が優勝を狙おうとする。そのためにいい選手を集めて補強する。スポーツにおいて不可欠な“優勝劣敗”が競馬には当てはまらない。戦力は馬だけではないはずだが…。

 在籍する厩舎を辞めて他厩舎に移りたい人はどうすればいいのか?JRAに届けを出したあと、欠員の出た厩舎を探すのだが、馬房が埋まっている以上、欠員はありえない。そして、3カ月以内に新たな厩舎に移籍しなければ職を失うことになる規定もある。馬房数に上限がある現行のシステムだと、行きたい厩舎へ移る、獲得したい腕利き助手を獲得するというのは困難だ。

 昨年の有馬記念の取材で驚いたことがあった。角居厩舎はエピファネイア、ラキシス、デニムアンドルビーの3頭を出走。ラキシスはそれまでの栗東CWではなく、デビュー2戦目以来、1年10カ月ぶりとなる栗東坂路追いを行った。角居調教師にその意図を尋ねると、意外な返事が返ってきた。

 「3頭を出走させるので各馬がライバル。スタッフもそういうつもりでやっていますから、私は指示していないんです。どの馬の味方なんだ?ってなるでしょ。優秀なスタッフなので任せています。詳しくは担当スタッフに聞いてもらった方が…」。調教師がスタッフに全幅の信頼を寄せていることが伝わる。

 角居厩舎もトレードや移籍で人材を集めたわけではない。ただ、取材をしていてもスタッフの強いプロ意識を感じることが多い。さすがは昨年の賞金獲得金トップ厩舎。馬だけでなく、調教師が人も育ててきたのだろう。

 栗東トレセンに1250人ほどの厩舎スタッフが在籍するなか、昨年、1年間で転厩した人(定年の調教師の厩舎解散は除く)は約15人。これは非常に少ない。将来的には厩舎システムの変革も必要ではないだろうか。海外では厩舎の持つ馬房数に上限がなく、スタッフの入れ替え、トレード、引き抜きも多いと聞く。世界で対等に戦えることを目標にするなら-。日本も馬房数の上限を撤廃し、調教師が“欲しい”と思った助手や厩務員を受け入れる。そして、その調教師が各スタッフを信頼して任せられるような厩舎づくりができれば、さらに強い馬づくりができるのではないだろうか。(デイリースポーツ・井上達也)

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