破天荒エイシンヒカリに大器の期待
2014年10月31日
この勝利に、坂口師は「勝ったから良かったけど、負けていたら何を言われていたか分からんな」と笑みを浮かべて安ど。幼少期は「小さい馬で全体的に体が弱かった」ため、春のクラシック(皐月賞、ダービー)は早い段階でパス。「急がなかったことが結果的には良かった」と話すように、馬の成長に合わせた育成が奏功し、快進撃へとつながった。
父ディープインパクト、母の父ストームキャットは、12年のダービー馬キズナや桜花賞馬アユサンと同じ配合。競馬は“ブラッドスポーツ”とも呼ばれる。同馬も一本筋が通った血統で、ビッグレースを勝てるだけの爆発力を秘めている。
調教担当の村井助手は、初めて追い切りに乗った際に「すごい動きで“これは走る”と思った。全部がすごかった」とモノの違いを感じたそう。だが、それでいて「現時点では7分ぐらいしかできてない」と言うから恐れ入る。残りの3分は「もっと筋肉がついてこないと。あとは気性。カッとなるので、そのあたりが良くなれば」と成長途上のスター候補に注文をつける。
近々の課題は“真っすぐに走ること”だろうが、坂口師はさほど気にしていない様子。「いくらかもたれる面はあるけど、それほどでもないんだ。あの場面も、よれてほかの馬に迷惑をかけた訳じゃない。余裕があったからこそ無理に矯正しなかったんだと思う。現にジョッキーも言ってた。“そんなにもたれてはいなかったし、外の方が馬場状態が良かったし…”ってね」。確かに、あれだけ逸走したにもかかわらず、制裁は“調教再審査”までは及ばず“調教注意”にとどまった。もたれ癖は、時間とともに解決するだろう。
今後について、坂口師は「今は少しテンションが高い。馬が落ち着くのを待ってから考えたい」と明言を避けたが、年内は休養に充てる公算が高い。この先、さらにハードルは上がるが「ここまで段階を踏みながらうまく育っている。重賞挑戦とかはまだ考えていない」とこれまで通り、じっくりと育てていく方針だ。
真っ黒な馬体が印象的だが、実はこの馬、よく見ると“芦毛”。白さが増してくる今後は、アイドルホース・オグリキャップのような姿に変貌を遂げ、サイレンススズカを超える“最強の逃げ馬”となる可能性を秘めている。スターホース不在と言われる日本競馬の希望の“光”となるか。
(デイリースポーツ・松浦孝司)