高山 命がけに11ポイント差は冒とく

 最大11ポイント差‐。覚悟の完全アウェーで王座陥落を受け入れても、命がけで戦ったボクサーを冒とくする判定は許せなかった。

 9日、メキシコ・モンテレイで行われたIBF・WBO世界ミニマム級王座統一戦。IBF王者・高山勝成(31)=仲里=はWBO同級王者フランシスコ・ロドリゲス(21)=メキシコ=に0‐3の判定負け。3度目の王座防衛はならず悲願の4団体制覇も逃した。

 3回にアッパー気味の左フックを浴びスリップ気味に倒れた。これをダウンと判定された不運から、中盤以降、打ち合いに応じ猛追。高山はロープに何度も相手を追い詰めダメージを与えた。

 「最後のゴングが鳴った時、勝ったとも負けたとも思わなかった」と高山。アウェーの不利を差し引いてもどっちに転んでもおかしくないクロスファイト。日本で試合の録画映像で見たボクシング関係者は「高山が勝っていたと思う」と口をそろえていた。

 しかし微妙な判定勝負は115‐112、116‐111、119‐108とジャッジ3人全員、ロドリゲスに軍配。1人は11ポイント差も付けたのだ。

 高山が中学時代から二人三脚で歩んできた中出博啓トレーナーは「1人がドローでも負けている。3~4ポイント差で負けても仕方がない内容」と敗戦は受け入れた。ただ11ポイントもの大差は、アウェー判定の許容範囲を超えていた。

 「100試合以上、裁いてきたレフェリーが『ベスト3に入るすごい試合だった。ただジャッジの1人は永久追放した方がいいレベル』と言っていた。どこに目を付けているのか。ボクサーへの冒とくでしかない。あきれる」と怒りの形相で吐き捨てた。

 高山は09年、JBC(日本ボクシングコミッション)に引退届を提出し、フィリピン、南アフリカ、メキシコと世界を舞台に連戦を重ねた。昨年3月にIBF王座を奪取し、日本初の3団体王者に輝いた。

 熱狂的な異国のファンから命の危険にもさらされたこともある。今回もアウェーの洗礼は半端じゃなかった。前日計量が1時間半遅れ、試合中は現地テレビクルーが高山陣営のコーナーに陣取り、高山側のセコンド2人が羽交い締めにされ、場外に連れ出された。

 「それがなかったからって勝ってたわけじゃない」と中出トレーナー。敵地での不利は百も承知だが、まな弟子が命がけで奪ったIBF王座ベルトを、1人のジャッジが汚したことは許せなかった。

 帰国後、高山は「ファイターとしての仕事はした。相手が頑張った。ダウンもアウェーなら仕方がない」と言い訳はしなかった。

 今後の去就は「心と体を休めて、決めたい」と時間をかけ判断する。現役引退に関しても「心と体に聞いてみてから」と否定はしなかった。

 中出トレーナーは「高山が決めること」とまな弟子の決断を待つ考え。「戻ってくるなら」と前置きした上で「俺と高山の性格上、もう1回、WBO、4団体を狙いに行く。もう1度、海外。それは意地の部分」と、4団体制覇に再チャレンジすることを明言した。

 「燃え尽きてはいない。衰えも感じていない」と高山。4月から名古屋市の私立菊華高校に入学し、勉学と世界王者の二足のわらじを履いてきた。高校生活初の夏休みにゆっくり羽を休め、まずは気持ちの整理を付ける。

(デイリースポーツ・荒木 司)

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