両毛線沿線3校、切磋琢磨で白星そろう

 大会も佳境に入った今春のセンバツ。個人的にひそかに“快挙”だと感じたのが、ある地域の活躍だ。お気づきのファンの方もおられたかもしれない。白鷗大足利、佐野日大(ともに栃木)、桐生第一(群馬)の3校が、そろって初戦を突破したのだ。

 大会第3日は、第2試合で白鷗大足利が15安打を放って東陵(宮城)を撃破。すると、直後の第3試合では、佐野日大がプロ注目左腕・田嶋の快投で、鎮西(熊本)に完封勝利した。栃木勢のアベック星は、14年ぶりのこと。さらに同じ都道府県のチームが1回戦で同日に勝利したのは、35年ぶりだった。

 そして、大会第5日には桐生第一が先発全員安打で今治西(愛媛)に快勝。先発8人を占める2年生軍団が躍動した。

 この3校は、実は相当な“ご近所さん”だ。学校の所在地は、いずれもJR両毛線沿線になる。東から佐野、足利、桐生の順で、佐野から足利までは13分、足利から桐生までは15分。乗り換えなしの30分以内で移動できてしまう。

 これだけの近距離、しかも同じ路線の学校が、そろって甲子園に出場するのは珍しい。さらに、すべてのチームが勝利という結果を残したことは、地域のレベルを証明したといえる。

 桐生第一は、日頃から白鴎大足利や佐野日大と練習試合をする間柄。東京圏や関西圏ほど人口が多くはない地域内で、全国レベルの相手と互いに実力を磨いてきた。青柳正志部長は「みんな1つ勝ったというのがいいことじゃないですか」と、白星そろい踏みの意義を口にする。

 また、桐生からさらに西へ、30分ほど両毛線に揺られれば前橋。ここには、昨夏甲子園で優勝した前橋育英がある。99年夏に群馬勢で初めて全国制覇した桐生第一も、唯一の存在ではなくなった。福田治男監督は、昨夏以降「今度はどちらが先に、2度目の全国制覇をするかだよ」と、ナインにハッパをかけてきた。青柳部長は「(前橋育英の)高橋光成君の元チームメートもウチにはいますし、やっぱり、選手の刺激にはなっていますよ」と相乗効果を認めた。

 佐野日大や白鷗大足利には群馬出身者が、桐生第一もエース・山田ら栃木出身者のメンバーが名を連ねる。大会前、白鷗大足利の藤田慎二監督は「みんな両毛線なので、先に負けて帰れないですね」と冗談交じりに笑っていた。身近に全国的な強豪が増えるほど、地域全体のレベルが向上するのは、青森や岩手の東北勢など、過去の歴史が証明している。センバツはもちろん、夏も含めて、両毛線沿線のチームに注目していきたい。

(デイリースポーツ・藤田昌央)

編集者のオススメ記事

コラム最新ニュース

もっとみる

    ランキング

    主要ニュース

    リアルタイムランキング

    写真

    話題の写真ランキング

    注目トピックス