須崎優衣が金 圧巻の全戦完封Tフォール勝ち レスリング女子最多タイ4個目に

 「東京五輪・レスリング女子フリースタイル50キロ級・決勝」(7日、幕張メッセAホール)

 女子50キロ級は初出場の須崎優衣(22)=早大=が決勝で孫亜楠(中国)にテクニカルフォール勝ちし、金メダルを獲得した。6日の1回戦から全4試合、無失点のテクニカルフォール勝ちとした。女子で日本は53キロ級の向田真優(ジェイテクト)と、57キロ級の川井梨紗子、62キロ級の川井友香子(ともにジャパンビバレッジ)の姉妹に続いて4個目の金となり、これまで最多の2016年リオデジャネイロ五輪に並んだ。

 強すぎて、感慨にふける暇もない。須崎は決勝もわずか96秒でねじ伏せると、中学から指導を受けてきた吉村祥子コーチと抱き合って喜んだ。「本当に東京五輪の金メダルを手に入れたんだと。最高の気持ち」。今大会4試合全てで10点差をつけてのテクニカルフォール勝ち。衝撃的な強さを見せつけた。

 「0・01%」からの復活で金メダルをもぎ取った。19年7月には一時、自力での五輪が消滅。「何のために生きているかわからない」。絶望する須崎の背中を押したのは姉麻衣さん(25)の言葉だった。「まだ終わったわけじゃない。今まで通り優衣らしく頑張ればいいよ」。失意を抱えながらも3日後からは練習を再開。ライバルが五輪出場枠を逃したことで奇跡的に復活したチャンスを悲願につなげた。「一度あきらめかけた夢の舞台。応援してくれた方に感謝でいっぱい」。苦難はうれし涙に変わった。

 7歳から父康弘さん(59)がコーチをしていた松戸ジュニアクラブで競技を始めた。両親いわく「どこにでもいる普通の子」。練習中もトイレやカーテンの裏に隠れ、大人に捜させてキャッキャと笑う女の子だった。週1回、日曜午前の練習を終えると、近くのすし店「金太楼鮨」に向かうのがいつものコース。康弘さんは「1000円もしないランチだけど、それを楽しみにしていた。おすしかレスリングか、どっちが目当てかわからない」と笑って振り返る。

 試合が女子同士になる小学3年で全国制覇したことを契機に徐々に本気になった。伊豆のホテルでの祝勝会で知り合いに大きなケーキを用意してもらったことに感激。また、吉田沙保里が金メダルを獲る姿に憧れ、五輪を夢見るようになった。

 中学進学時にJOCエリートアカデミーから誘いを受けたが「子離れできなかった」と父はいったんは断った。しかし、松戸ジュニアの渡辺弘道代表から「この子は金メダルを獲れるから」と念押しされ、須崎自身も意を決して自分の可能性に懸けた。それまで自分で洗濯をしたこともなかった少女は、全寮制の養成機関で歯を食いしばり、17、18年には世界女王に輝いた。

 “どこにでもいる女の子”は比類なき五輪王者となった。夢を1つかなえたが、これで終わる才気ではない。プレゼンターを務めた五輪4連覇の伊調馨からは「また次も頑張ってね」と声を掛けられた。「五輪王者としてもっともっと強くなって、さらに高みを目指したい」。女子レスリングの新たな伝説が始まった。

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