川井梨紗子が五輪連覇 夢かなえた!妹・友香子と日本勢史上初の姉妹金

 日の丸を背に万感の表情を見せる川井友香子(撮影・高部洋祐)
 イリーナ・クラチキナ(下)を攻める
 スタンドから姉・梨紗子を応援する川井友香子(左)
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 「東京五輪・レスリング女子フリースタイル57キロ・決勝」(5日、幕張メッセAホール)

 姉妹で頂点に立った。女子57キロ級は2016年リオデジャネイロ五輪63キロ級女王の川井梨紗子(26)=ジャパンビバレッジ=が決勝でクラチキナ(ベラルーシ)を下し、2大会連続優勝した。62キロ級を制した妹の友香子(23)=同=とともに、夏季競技同一大会で日本勢初の姉妹金メダルを成し遂げた。今大会、日本のメダルは金、銀、銅合わせて46個で、前回リオデジャネイロ五輪の41個を超えて、史上最多となった。

 梨紗子が姉妹金メダルの約束を果たしたとき、最前列で祈るように見守っていた妹・友香子は顔を覆った。「どちらか片方が負けてもできない目標を掲げ、リオのときとは違う重圧があった。本当に夢みたい」。梨紗子の目に涙があふれた。

 4日の62キロ級で一足先に友香子が金メダル。「友香子に背中を押してもらった」と集中した。開始1分、クラチキナからテイクダウンを奪いリードすると、その後も「最後の1秒まで絶対に渡さない」。完勝で2連覇を飾り、妹に続いた。

 金メダルを獲得したリオ五輪でやり残しが2つあった。1つは姉妹での金メダル。もう1つが、本来の58キロ級(現57キロ級)を事実上、五輪4連覇の伊調馨に明け渡し、日本のチーム事情で63キロ級への階級変更を強いられたことだった。

 「当時は58で馨さんに勝ちたい気持ちしかない。階級変更した悔しさは時間がたっても変わらなかった」。リオ五輪後に友香子と階級のすみ分けを迫られたとき、こだわりの57キロ級を選んだ。

 2018年に休養を経て復帰した、至学館大の先輩にもあたる伊調との代表争いは望むところだった。予想外だったのは、金メダリスト対決に対するマット外からの雑音。梨紗子は逆風の中での戦いになった。12月の全日本選手権は伊調に惜敗。会場の隅で「もう耐えられない」と母の初江さん(51)にこぼした。引退も頭をよぎった。

 所属するジャパンビバレッジの金浜良監督(54)は、苦悩する梨紗子を諭した。「彼女(伊調)は一流選手だけどおまえも一流。一流らしい振る舞いをしないといけない。五輪に向かえるものを自分で拒否するのか」。再起した梨紗子は選考会で伊調に2連勝し、五輪へつなげた。

 幼いころテレビで見た伊調の印象は強烈だった。「ずばぬけて強い。軽く五輪へ出ているようにすら見えた」と言う。伊調と一緒に出場したリオ五輪では、選手村エレベーターで「五輪は何か違うんですか」と尋ねた梨紗子に、伊調は「注目が違うだけ。自分がやることは変わらない」。その答えは今も頭にある。

 憧れであり、壁でもあった伊調を超えた先で手にした2連覇。成長した妹とともに、ひとまずリオ五輪の宿題も終えた。梨紗子は「試合が終わった瞬間、レスリングは最高だと思った。帰って練習してるんだろうなと思った。簡単に五輪とは言えないが、やめられない」と笑う。

 次のパリ五輪は3年後。姉妹金の再現へ、そして伊調も歩んだ3連覇の道へ。梨紗子のレスラー人生に、まだ終わりは見えない。

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