田中亮明 メダル確定 決死猛ラッシュで判定勝ち「心臓が破裂しそう」
「東京五輪・ボクシング男子フライ級・準々決勝」(3日、両国国技館)
男子フライ級では田中亮明(27)=岐阜・中京高教=は準々決勝に勝って5日の準決勝に進出。3位決定戦がないため、メダルを確定させた。
判定の瞬間、膝から崩れ落ちたのは、メダルを決めた安堵(あんど)感ではない。「酸欠で、勝ったか負けたかもわからなかった」と田中。試合終了後は車いすで医務室に運ばれ、治療を受けて取材ゾーンに現れた。「本当は叫んでやろうと思っていたけど叫べなかった。心臓が破裂しそう」と照れ笑いで明かした。
すべてを出し切るほど攻めの姿勢を貫いた。1回戦から3戦連続となったリオデジャネイロ五輪メダリストとの対戦にも一切ひるまない。1回は相手、2回は僅差で田中、3回はジャッジ5人全員が田中の逆転勝利。「勝っていようが負けていようがいくしかない」と守りに入らず、相手の足が止まってきた最終ラウンド後半にさらに攻め立てた。
いかに見栄えよくポイントを取るかを競うアマチュアボクシングで「最後の1秒まで倒すつもりで戦っているけどなかなか倒れなかった。次は倒します」と泥くさく言い切るのは、コロナ禍での環境の変化によるのだろう。五輪延期となり、これまでプロとアマで練習も会話も少なかった元3階級制覇王者の弟、恒成(26)=畑中=との合同練習を希望した。
「日本の五輪なので判定面でガンガン攻めていく方が有利かなと、ボクシングスタイルを変えたいと思った。弟はガンガンいくスタイルだから」と、恒成を指導した父の斉トレーナーに教えを受け、恒成にもアドバイスを仰いだ。歯に衣(きぬ)着せぬ弟の指摘は、チラシの裏のメモ書きとして残している。
リオ五輪も直前で逃し、これまでは「弟の七光みたいな存在で目立たせてもらっていた」と話す苦労人。しかし「本番に強いのは自分が一番知っている。僕はチャレンジャーなので、全員食ってやろうと思って毎試合戦っている」と腹をくくっている。