走り幅跳び・橋岡「経験不足」 今季絶好調もほろ苦い夏 戦後最高6位入賞も「悔しい」
「東京五輪・陸上男子走り幅跳び・決勝」(2日、国立競技場)
男子走り幅跳び決勝が行われ、橋岡優輝(22)=富士通=は8メートル10で6位入賞を果たした。3位とは11センチ差で目標としていたメダルは逃したが、84年ロサンゼルス五輪の臼井淳一(7位)以来37年ぶりの入賞で、戦後最高順位となった。
ほろ苦い夏となった。決勝の最終6本目。「五輪は3年後しかない。ここで悔いを残してはいけない。けがをしてもいいから跳ぼう」。腹を決めて挑んだ最後の最後にようやく橋岡らしい跳躍が出た。鋭い助走から力強く跳び出し、この日初めて8メートルを超えるジャンプ。ただ、時既に遅し。3位までとは11センチという差に「悔しいです。メダルを狙えたと思う。しっかり自分の跳躍ができていれば、金メダルも狙えた」。結果が示された電光掲示板をジッと見つめ、悔しさをかみしめた。
7月31日の予選では1本目で8メートル17をマーク。一発で規定の距離を超えて予選突破を決めた。「最低限」と話してきたメダルは十分に射程圏かと思われたが、決勝では助走でスピードを欠いた。元日本記録保持者の森長正樹コーチは「(予選を)1本で通過したが、ウオームアップから疲れが見えていた」。今季当たり前のように跳んできた8メートルをなかなか超えられず。メダル争いに食い込むことはできなかった。
今季絶好調だった若武者に立ちはだかったのは経験の壁。上位陣は世界各地で転戦される最高峰の賞金大会ダイヤモンド・リーグ(DL)でしのぎを削る選手たち。「自分は中1日でのタフな試合をこなしていない。経験不足があったと思う」。修羅場をくぐった数の違いを痛感した。
父利行さんは棒高跳び、母直美さんは100メートル障害の元日本記録保持者。五輪の舞台に立てなかった一家の夢は叶(かな)えた。東京でのメダルの夢は現在4強入りを果たしている男子サッカー日本代表で、いとこの大樹に託すことになったが、橋岡の目はもう3年後のパリに向いている。「待ち遠しくはない。しっかりこの3年かけて、金メダルを獲るために、それを実現させるだけの力をつけていきたい」。涼しげな瞳の奥に、炎が宿っていた。