田中希実、日本新で準決勝進出 1500メートル序盤先頭から粘り抜き4着

 「東京五輪・陸上女子1500m・予選」(2日、国立競技場)

 日本記録保持者の田中希実(21)=豊田自動織機TC=が自身の記録を1秒75更新する4分2秒33の日本新記録で3組4位となり、準決勝進出を決めた。卜部蘭(26)=積水化学=は4分7秒90の自己ベストも、2組9位で準決勝進出はならなかった。同種目に日本選手が出場するのは初めて。

 世界の猛者たちに交じっても、走りでも気持ちでも負けなかった。田中は序盤から先頭で積極的にレースを進めると最後まで粘りの走りで食い下がり、2位争いを展開。自身の日本記録を更新して4着。堂々準決勝進出を決めた。「日本記録を出せば行けると思っていた。ペースメーカーにされてるなとは思っていたけど、自分のペースでいけましたし、ラッキーでした」と充実の表情でうなずいた。

 タフさが光った。7月30日の5000メートル予選では自己ベストをマークしながら、惜しくも決勝に進めず。それでも中2日で臨んだこだわりのある1500メートルでは、しっかりと自身の力を出し切った。

 田中が東京五輪の選考レースの期間に同時進行で行っていたのが、800メートルから1万メートルまで幅広く、しかも過密日程でのレース出場だ。それは目指すものが日本記録や五輪切符にとどまらず、世界舞台で海外勢と互角に戦うことだったから。父の健智コーチ(50)は「1万、5000メートルの走力が上がれば、1500、800メートルでのスピードを生かすスタミナに生きる。普通はそれはないと思われがちだが、私たちはそれを逆手にとる」と話す。もともと田中は元来持ち得ていなかったスプリント力を、距離を踏むトレーニングで身に付けた。だからこそ、スプリント力を落とさず再び長距離へ取り組むことが可能になり、1500メートルでの終盤の粘りにつながった。

 決勝へ「燃え尽きるようなレースをしたい。気迫を最初から最後までまとって、やる気の塊のようなレースを」と意気込んだ田中。全身全霊の走りで、夢の扉をこじ開ける。

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