男子100M厳しい現実「予想外」高速化予選に充実期3人全滅 89年ぶりの決勝夢散
「東京五輪・陸上男子100m・予選」(31日、国立競技場)
日本記録保持者の山県亮太(29)=セイコー、小池祐貴(26)=住友電工、多田修平(25)=住友電工=はいずれも各組3着以内に入れず、それ以外のタイム上位3人にも食い込めず3人とも予選敗退が決まった。
リオ五輪後の5年で4人の9秒台選手を輩出。充実期を迎えたかと思われた日本男子短距離陣に厳しい現実が突きつけられた。6月の日本選手権を制した多田は、得意のロケットスタートが不発に終わり、中盤以降も伸びきれず、10秒22で1組6着。小池は中盤以降追い込んできたが、10秒22で4組4着。自動通過の3位に0秒01及ばなかった。多田が「ちょっと自分のレースが全くできなかったので、非常に悔しいです」と天を仰げば、小池は「残念。その一言に尽きます。戦える状態だと思っていたが、結果的にスピードが出ていない。感覚の勘違いがあったのか」と首をかしげた。
日本選手団の主将としても注目された山県も中盤から伸びを欠き、3着に0秒03及ばない10秒15の4着。他の組も合わせた4着以下のタイム上位3人にも入り込むことはできなかった。準決勝進出ラインは10秒12。ここにも0秒03届かなかった。
日本勢が本来の力を出し切れていなかったのも間違いない。ただ、予選から9秒台をマークする選手が4人もいるなど、高速化した予選の内容が世界の壁の高さを痛感させた。突破条件が各組上位2人とタイム上位8人だった16年リオデジャネイロ五輪では、予選から9秒台を出す選手はおらず、タイム上位の準決勝進出ラインは今回よりも0秒08遅い10秒20。東京と同じ各組上位3人とタイム上位3人だった12年ロンドン五輪でも通過ラインは10秒22だった。
山県は「トップはいつも速いので、どういうタイムできてもおかしくないなと思う。ただ、カットライン、準決勝のラインが高めなのは予想外でしたが」と認めた上で「0台を出せば問題なく通れたなと思えば、そういう意味で悔いが残る」と、言い訳はしなかった。
コロナ禍でこの1年半、海外でのレース経験が積めなかった中で、世界はさらに遠くなったことを印象付けられた。自国開催で89年ぶりの五輪ファイナリストの夢は儚く消えた。