金の新井千鶴 16分超死闘準決勝は絞め技で“失神”執念決着「何でもいいから決まって」
「東京五輪・柔道女子70キロ級・決勝」(28日、日本武道館)
執念の戴冠だ。新井千鶴(27)=三井住友海上=が、決勝でミヒャエラ・ポレレス(ポーランド)に優勢勝ちして、金メダルを獲得。準決勝はマディナ・タイマゾワ(22)=ロシア・オリンピック委員会=と16分41秒の死闘を繰り広げ、送り絞めで絞め落として一本勝ちした。
最大のヤマ場は準決勝だった。5月のGSカザン大会で負けている強敵は体が軟らかく、スタミナも豊富。投げても投げてもポイントが入らず、抑え込みに入っても2度連続で逃げられた。11分過ぎには腕がらみで相手の腕を決めて、一度は「一本」が宣告されたが、タイマゾワが「参った」をしていないとアピール。協議の結果取り消しになった。
16分過ぎには、新井が内股に入った勢いで一回転して返されかけてしまい、映像判定に入る大ピンチに。「続けさせてくれ-」。新井の祈りが通じ、続行した直後にチャンスが到来。腹ばいになった相手に送り襟絞め技を仕掛けた。「(相手の首元に)指三本しか入ってなかったが、何でもいいから決まってくれと…」。16分41秒、相手が落ちて失神するという壮絶な決着となった。
「気持ちだけは絶対に引かないように、何が何でも取りに行くと。絶対に勝ってやると思っていた」
リオデジャネイロ五輪は代表争い最終盤で出場を逃すなど、数々の苦難を経験してきた苦労人が、ようやく大輪の花を咲かせた。「うれしいの一言。振り返ると苦しいことの方が多かったが、あきらめずにやってきて、報われた瞬間だった。最高の気持ちです」と笑顔を輝かせた。