大橋悠依 6月にどん底「心が折れた」辞退も考えた種目で金「やっぱりメダルがとりたい」
「東京五輪・競泳女子400m個人メドレー・決勝」(25日、東京アクアティクスセンター)
大橋悠依(イトマン東進)が4分32秒8の好タイムで、日本競泳陣金メダル1号に輝いた。光輝く金メダルを首から下げて、午後からのメダリスト会見に出席した。笑顔と涙で、思いを語った。
「全然実感がなかったんですけど、(表彰台に)上る前にオリンピックチャンピオンっていうポールがあって、そこで自分がチャンピオンになったと思ってうれしさがあふれたのと、正直まだ信じられない気持ちでいっぱいです」
道のりは平坦ではなかった。貧血に悩まされた。昨年12月の五輪会場で行われた日本選手権は体調不良で欠場。五輪出場権がかかる4月の日本選手権は左股関節痛のため、痛み止めの薬を飲んでの出場。200メートル、400メートル個人メドレーの2種目で代表入りを決めていた。その後も状態は上がらなかった。
「正直、全然うまくいっていなくて、本当に金メダルを取れるなんて、きのうの予選を泳ぎ終わるまで一瞬も思うことはありませんでした。日本選手権、ジャパンオープンと過ごしてきて、最後の長野の試合を出させてもらった。もしかしたら決勝まで残れないんじゃないかという不安な気持ちもあって過ごしてきました」
五輪前最後の実戦だった6月の長野でのタイムトライアル。調子はどん底だった。涙を浮かべて当時を振り返った。
「長野の最後の試合が終わって、心が折れたんですけど、平井コーチから『チャレンジするのを辞める選択肢もあるんだぞ』と言われて、ひと晩時間をもらって考えて、ここにチャレンジするっていうのを決めたので、そこからどんな練習があっても粘ることができた」
ひと晩悩んだ結論は“挑戦”だった。
「400(メートル個人メドレー)を辞めて、200にシフトしようかと思ったこともあったんですけど、そのひと晩で。やっぱりメダルが絶対に取りたいという思いがあったので、メダルに近い方は400だなと思って、400に挑戦することを決めました」
本番が近づくにつれて、戦闘モードに入った。
「選手村に入ってから気持ちもワクワクしてきて、トレーナーさんの力も借りながら体の状態も良く作ってくれて、もしかしたらうまくいくかなと思ったのは選手村に入ってからです」。
そして迎えた前日24日の予選。余力を残して決勝進出を決めた。“もしかしたら”の気持ちは強くなった。
「きのうの予選が終わってから、もしかしたら金メダルがとれるかもしれないという考えもあって。ただ、余計なことを考えず自分のレースに集中して、周りは見ないで泳ぐというのが金メダルがとれた要因かなと思います」。
平坦ではない道のりを歩んでつかんだ金メダル。最後は笑顔で振り返った。