福原愛さん「チームジャパンの絆でより多くのメダルを」 石川選手の宣誓「誇りに思う」
東京五輪期間中、デイリースポーツでは特別コラム「祭典記」を掲載する。五輪への熱い思いを寄せる6人が日替わりで登場。2回目は卓球女子団体2大会メダリストの福原愛さん(32)が、東京大会への期待や思いなどをつづった。
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一年延期になった五輪、無事に前夜の開会式が開催されるといううれしさ反面、すごく不思議な気持ちで見ていました。今まで選手として出場した4大会は、開会式に出席しているか、選手村にいたか、練習をしているような状態で、実際にテレビでずっと見ることはなかったからです。
今回は応援する立場になって初めて見る五輪。スタートの午後8時までに間に合うように準備しないと、と五輪を見るみなさんの気持ちがよく分かりました。
開会式では、選手をはじめ、みなさんマスクをしていて、“コロナ禍での五輪”という現状を感じましたが、世界各国の選手団のみなさんの笑顔や姿を見て、難しい状況ではあるけれど開催できてよかったなと感じました。そして八村選手と須崎選手が旗手を務めたシーンに、2008年の北京五輪を思い出しました。
私も旗手を務めさせていただいたのですが、入場を待つまでの間にたくさんの方が旗を持って写真を撮っていました。なかなか旗が返ってこなくて焦ったりもしましたが、みんなで国旗を持つことで、日本代表としての責任がより生まれていくと思います。今回は公式の場で2人が交換していましたが、より緊張感や高揚感とか、いろいろな思いが芽生えたのではないかと感じました。
そして、石川選手が五輪の舞台で副主将として宣誓をしていたシーンは、とてもかっこよかったですし、私は卓球人として、卓球の選手が宣誓をしたことを誇りに思います。
最後の点火では、大坂選手が自分の足でしっかりと階段を上がり、自分の手でつけましたが、その光景が今回の五輪を表しているように感じました。コロナ禍が怖くて出場しないという選手がいてもおかしくありません。引退すると決めている選手もいると思います。いろいろな選択肢がある中、自らの意思で歩いて、強い意思で火をともしたと感じました。大会が一年延期になり、選手の方々はなかなかゴールが見えなくて、苦しい思いをしてきたはずですが、ここまできたら何も考えず、自分の試合のことだけを考えて臨んでほしいと思っています。
無観客での開催は、すごく寂しくもあります。ですが私は海外での五輪に出場してきて、テレビの前で応援してくださっている人がいる、という思いは常に心の中にありました。選手の方々は、テレビ越しでも応援してくださるみなさんからのより多くのパワーを会場で感じてくれると思います。
特に、卓球代表の選手たちにはメダルの可能性が十二分にあります。日本開催なので、応援以外のいろいろな情報も目や耳から直接入ってくることもあり、今までより戦いにくい部分もあると感じますが、今この瞬間を大事にして臨んでほしいです。
また、これまでとは違う五輪なので、チームジャパンの絆が大事かなと個人的には感じています。過去の五輪では、選手村のエレベーターに結果が載っていたりして『あの選手、メダルを獲得したんだ。私も頑張らなきゃ』と他競技の選手からもパワーをもらっていました。チームジャパンとして一丸となって、より多くのメダルをみなさんにお見せできたら、きっと選手も試合会場に行けなかった観客の方々も、幸せな気持ちになれると信じています。
◆福原愛(ふくはら・あい)1988年11月1日、仙台市出身。3歳9カ月で卓球を始め、全日本選手権は、5歳でバンビ(8歳以下)の部を制し、12、13年にシングルスを制するなど各世代別で優勝しグランドスラムを達成。五輪は2004年アテネから4大会連続で出場。12年ロンドン大会の団体で銀メダルを獲得し、五輪における日本卓球界初のメダルとなった。16年リオ大会の団体では銅メダルを獲得。18年10月に現役引退。