“上野由岐子の五輪”が始まる 監督「おそらく最後」38歳エース、福島で集大成に
東京五輪のソフトボール女子日本代表は20日、開会式(23日、国立競技場)に先駆けて行われる21日のオーストラリア戦へ向けて、試合会場の福島県営あづま球場で公式練習を行った。エースの上野由岐子(38)=ビックカメラ高崎=は、マウンドの状態などを入念に確認。宇津木麗華監督(58)は、「おそらく五輪は最後。ソフトボールを引っ張ってきてよかったという大会にしたい」と今大会を「上野の五輪」と位置付けた。
3度目の五輪。報道陣に公開された冒頭30分の練習での笑顔と、時折見せるピリピリ感が、上野の今の心を映していた。「いよいよ明日だなという感じです」。レジェンドですら味わったことのない独特の胸の高まりには、さまざまな意味がある。
五輪競技への3大会ぶりの復帰はコロナ禍で1年延期となり、13年の空白があいた。自国開催。そして、開幕戦の開催地は「復興五輪」の象徴となる福島。この日の練習では、ブルペン投球とともにマウンドの状態を入念に確認。「(3戦目以降の)横浜スタジアムとは違う感覚のグラウンドで芝の状態も違う」と把握した。「気持ちが高ぶりすぎないようにしっかりコントロールして(試合に)入りたい」と自らを律するのが上野らしい。
日立ルネサス高崎の監督時代から約20年にわたって上野と師弟関係にある宇津木監督にも特別な思いが湧き上がっている。出場6カ国の監督による記者会見で、今大会の意味を「おそらく(上野にとって)五輪は最後。この年までソフトボール界を引っ張ってきてよかったという大会にしたい」と語った。
集大成の場には13年ぶり2度目の金メダルが必須だ。勢いをつける“開幕投手”は上野か、投打二刀流の藤田倭(30)=ビックカメラ高崎=か。リリーフとしての期待がかかる左腕のホープ後藤希友(20)=トヨタ自動車=も準備を整えているが、指揮官は「一晩、考えさせてください」とコーチ陣とのミーティングで決断する意向を示した。先発二本柱として福島での上野、藤田の登板は濃厚だ。
選手村に入った15日に披露した“侍ヘア”は、有終五輪への覚悟の証しにも見えた。改めてその意味を問われた上野は「髪を伸ばしていて結べるようになったから」と何食わぬ顔で一度は言った。そして「このタイミングで結べるだけ伸びてきてくれた。そういう運命だったんだなと思います」。その運命は必ず、栄冠に帰結する。