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【特別版】丸山桂里奈、福島復興とともに復活五輪へ

2012年3月20日

取材中に丸山の携帯電話が鳴った。着メロは「大好きな」AKB48の「ポニーテールとシュシュ」。記者の録音レコーダーを指さし、「この音入っちゃったらヤバイですよね」と笑った。こんなピースサインをロンドンで見せて欲しい(撮影・吉田 風)

取材中に丸山の携帯電話が鳴った。着メロは「大好きな」AKB48の「ポニーテールとシュシュ」。記者の録音レコーダーを指さし、「この音入っちゃったらヤバイですよね」と笑った。こんなピースサインをロンドンで見せて欲しい(撮影・吉田 風)

 世界の舞台で活躍を目指すなでしこ戦士の素顔を追う新企画「なでしこプレミアム」が、4月に本格スタートする。特別版の今回は、サッカー女子のなでしこリーグ、スペランツァFC大阪高槻のFW丸山桂里奈(28)が登場。昨年のドイツW杯準々決勝ドイツ戦で劇的な決勝ゴールを決めた女神は、直後のロンドン五輪最終予選で右膝前十字靱帯(じんたい)損傷(全治6カ月)の重傷を負った。ロンドンを目指し、新天地高槻で再起を期す今季。今、何を思い、リハビリに励むのか。元東電社員の肩書を持つ丸山にとって、3・11が意味するものとは…。いよいよ25日、チームに合流。翌26日に、29回目の誕生日を迎えるドイツのヒロインを直撃した。

  ◇  ◇

 配属先は福島第1原子力発電所だった。大学卒業後、東京電力に就職した丸山桂里奈は福島県双葉町で22歳からの5年間を過ごした。東京都大田区で生まれ育った都会っ子が、人口6千人あまりの田舎で人生初の1人暮らし…。寂しさも不安もあった。勇気をくれた職場仲間は今も「福島の家族」。2011年の記憶はW杯優勝の前に3・11がある。第2の故郷を襲った大震災はまさに身内の危機だった。

 「原発が水素爆発したって聞いたとき、うそでしょ!って。すぐに原発で働いていた親友に連絡したけど、電話もメールも通じなかった。3日後に連絡がついたとき、彼女、避難所にいた。原発の作業服を着たまま逃げたから、差別もされたみたいで。メールの画像を開いたら破壊された町…涙が止まらなかった」

 東京電力女子サッカー部マリーゼの1期生として活躍。05年のL・リーグ(現なでしこリーグ)で新人王に輝いた。プロ契約のない実業団チーム。昼間は福島第1原発の所長付として、会議の資料作成から弁当配り、お茶くみまで、いわゆるOL業務をこなした。女子サッカーと駅伝が東電のシンボリックスポーツに指定され、マリーゼは好待遇を受けた。

 「親元を離れて家を出たのも初めてで、福島がどういう町かも知らなかった。チームの責任者と話したときに、丸山さんが住んでみて、どうしても無理なら東京に帰ってもらっていいからと言われた。周りに何もなくて不安だったけど、所長がかわいがってくれて…。職場の人も親切で、皆でマリーゼを応援しようみたいな雰囲気があった。同僚と一緒にいる時間が大切になって、会社に行くことが楽しかった」

 3・11は母・慶子と東京都大田区の自宅にいた。昨季所属したジェフ千葉の練習に向かう支度に追われ、トイレの中で激震に耐えた。震災後、世話になった東電幹部の会見が連日ニュースで流れた。実家に備えた非常食を段ボールに詰め、福島で待つ親友のもとへ。都内のコンビニから水や食料が消えると、自身のブログで東北のために買いだめをやめて!と訴えた。千葉の練習場も被害を受け、活動は休止。夜は都内をランニングしながら、普段目に留めなかった「無駄な電気」の多さを嘆いた。

  ◇  ◇

 震災から1年。元東電社員の肩書を背負いながら、鎮魂の時報とともに黙とうを捧げた。重傷から復活を期す五輪イヤー。今季、大阪高槻に加入した丸山は現在、横浜郊外のフットサル場でトレーニングに励んでいる。

 「なでしこが注目されて、盛り上がってきたときにケガ。なんで、今?って気持ちにもなったけど、私、ポジティブなんで、これも絶対意味があると思える。代表も若手がどんどん出てきて、すごくいいところはあると思うけど、自分が負けない部分は絶対にある。そこは自信を持っていないといけないから」

 負けず嫌いの性格で、幼いころから自我を通してきた。勝ち気な少女がサッカーを始めたきっかけは、意外にも…。

 「小学5年のとき、好きな男の子がサッカーやろう!っていうから、軽いノリで。陸上、剣道、テニス、ピアノ、バレエ…いろいろやったけど飽きたらすぐやめちゃって。サッカー選手になろうとも思わなかった」

 兄・泰広の影響で始めた陸上競技はすぐに才能が開花。当時は背が低く細身のランナー体形で長距離走は群を抜き、中高一貫の私立中学から授業料の一部免除で強豪の陸上部に勧誘された。両親は喜んだが、当事者は知らぬ顔。気になったのは、近所のおじさんが「やってみれば?」と持ってきた新聞記事だった。

 「読売メニーナ(現日テレベレーザの下部組織)のセレクションの応募が出てた。会場に200人以上来たけど、10人枠に受かっちゃった。足が速かったからかな」

  ◇  ◇

 中学時代はサッカーに没頭。たぐいまれな身体能力で頭角を現し、ベレーザに自動昇進するエリートに。将来を嘱望されたが、乙女心が芽生える多感な時期。一度だけ“男”が原因で道を外れた。

 「仲良かった不良の女の子に誘われて、3カ月間、練習をサボった。ジャニーズジュニアが大好きで、「怪談トリオ」(滝沢秀明、今井翼、川野直輝)でタッキー&翼になれなかった川野クンの追っかけをやってて、家にも帰らなかった」

 26日に29回目の誕生日を迎える。9月26日の右ひざ手術からちょうど6カ月。25日に大阪に入り、再出発を誓う記念日にする。ロンドン五輪に臨む18人の代表入りを目指すなら常勝チームで得点を重ねる選択肢もあった。複数のオファーの中で、なぜ大阪高槻だったのか。丸山には揺るぎない信念があった。

 「最初は冷静になれず、強いチームに行かなきゃ!って焦ったけど、私は、スター選手がそろってなくても結束したら強いチームにやりがいを感じるタイプ。自分が引っ張っていく姿とか、たとえボールが来なくても、ひたむきに頑張ってる姿を見せることが一番。のりさん(なでしこジャパン佐々木則夫監督)も私のプレーは分かってるし、パフォーマンスが上がれば大丈夫だと思う」

  ◇  ◇

 実は関西にトラウマがある。大学時代、三宮で見知らぬおっちゃんに背中をビシバシたたかれ、大阪駅のホームで横入りしたおばちゃんからバッグをけ飛ばされた。関西人の印象は最悪。それが…最近は大阪に知人が増え、高槻ファンの優しさも身に染みてきた。

 「大阪と言えば、タイガース。甲子園に行ったことはないけど、野球は大好き。赤星(憲広)さんとは友達で、ひざを手術する前も電話で励まされた。去年は東京ドームの巨人阪神戦で始球式をやらせてもらった。マートンが私との対戦を楽しみにしてるって言ってくれて…。投げた後、関係者にマートンはどこにいたの?って聞いたら、打席にいたよ!って。あれ?みたいな(笑)。今度はぜひ、甲子園で始球式をやってみたい!」

 新天地で復活を果たせば、伝統の一戦で聖地のマウンドへ。そんな夢も膨らませながら、高槻からロンドンを目指す。サッカー人生の集大成をかけ、ドイツのヒロインが大阪でよみがえる。(敬称略)

  ◇  ◇

丸山 桂里奈(まるやま・かりな)

▽誕生 1983年3月26日、東京・大田区生まれ

▽サイズ 163センチ、56キロ

▽血液型 O

▽利き足 右

▽好きなサッカー選手 三浦知良、メッシ

▽好きなアーティスト AKB48

▽ファミリー 父、母と兄、きなこ(愛犬)の5人?家族

▽座右の銘 逆転力

▽経歴 読売メニーナ‐東京経営短大村田女子高‐日体大から05年に東京電力マリーゼに加入。10年に米国プロリーグ・フィラデルフィアへ移籍した後、千葉に入団。今季、なでしこリーグに昇格した大阪高槻に移籍。04年アテネ、08年北京五輪に出場。代表通算68試合14得点

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